DOEは、会社の資本に対して年間配当がどのくらいあるかを示す指標です。配当利回りが購入価格と配当を比べるのに対し、DOEは会社側の資本と配当を比べます。
同じDOE4%でも、十分な利益を出している会社と、年間利益を上回る配当を出している会社があります。この記事では、分母をそろえた計算例でDOE・ROE・配当性向の関係を確かめたあと、オムロン、住友金属鉱山、クレハ、大同特殊鋼の決算短信と配当方針の原文を並べました。数値は2026年10月18日に各社の開示資料で確認したものです。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。配当方針や配当予想は変更される場合があるため、最新情報は各社の公式資料でご確認ください。投資判断はご自身の責任において行ってください。
DOE・配当性向・配当利回りは分母が違う
DOEは、配当総額を、その会社が計算に用いる資本額で割った割合です。企業資料では株主資本配当率などの名称が使われますが、分母の定義や計算時点は会社の説明を確認する必要があります。
| 指標 | この例で使う計算式 | 比べるもの |
|---|---|---|
| DOE | 年間配当総額÷資本額×100 | 配当と会社の資本 |
| 配当性向 | 年間配当総額÷当期利益×100 | 配当とその年の利益 |
| ROE | 当期利益÷資本額×100 | 利益と会社の資本 |
| 配当利回り | 1株当たり年間配当÷株価×100 | 配当と株の購入価格 |
決算短信を開くと、もう一つ似た指標が出てきます。短信に載る「親会社所有者帰属持分配当率」で、分母は期中平均の持分です。一方、大同特殊鋼や住友金属鉱山が配当方針で使うDOEは、前期末の親会社所有者帰属持分から「その他の資本の構成要素」を除いた額(株主資本)が分母です。名前が似ていても、両者は別の数字として読みます。本記事では、短信の数値を「持分配当率」、会社方針の数値を「DOE」と書き分けました。オムロンのように「株主資本配当率」の名前で、四半期末の平均を分母にした値を会社自身が公表する例もあります。配当性向の分母は1年分の利益なので、資本を分母にするDOEより年ごとの振れが大きい点も違いです。
以降の計算例は仕組みを示すため、DOEとROEの資本額を同じ1,000億円に固定します。期間、連結・単体、利益の範囲もそろえた前提です。実際の企業が公表する数値を、そのまま再現したものではありません。
配当金そのものの受け取り方や税金の基本は、配当金の基礎をまとめた記事で整理しています。

DOE4%でも、利益が減れば配当性向は上がる
資本1,000億円に対して年間配当総額40億円なら、DOEは4%です。配当と資本を変えず、当期利益だけを変えると次のようになります。
| 当期利益 | 年間配当総額 | DOE | ROE | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| 100億円 | 40億円 | 4% | 10% | 40% |
| 50億円 | 40億円 | 4% | 5% | 80% |
| 20億円 | 40億円 | 4% | 2% | 200% |
最後の行は、利益20億円に対して40億円の配当なので、その年の利益を20億円上回ります。DOEだけを見ると、最初の行と同じ4%です。条件をそろえ、利益が正の値であれば、DOEはROEと配当性向の積として表せます。最初の行なら10%×40%=4%。利益がゼロや赤字の年は、この式で配当性向を比べられません。
同じことが実際に起きたのが、オムロンの2024年3月期です。同社は配当を「株主資本配当率(DOE)3%程度」を基準に決め、過去の配当実績も勘案すると決算短信で説明しています。
| 決算期 | 1株配当 | 配当総額(百万円) | 当社株主に帰属する当期利益(百万円) | 配当性向 | 株主資本配当率(会社公表) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 98円 | 19,452 | 73,861 | 26.3% | 2.8% |
| 2024年3月期 | 104円 | 20,534 | 8,105(89.0%減) | 253.3% | 2.7% |
| 2025年3月期 | 104円 | 20,531 | 16,271 | 126.2% | 2.6% |
| 2026年3月期 | 104円 | 20,526 | 28,487 | 72.1% | 2.6% |
| 2027年3月期(会社予想) | 110円 | ― | 27,500 | 78.9% | ― |
この期の利益は89.0%減りましたが、1株配当は98円から104円に増え、株主資本配当率は2.7%でした。配当性向は253.3%です。減益の理由として、同社は制御機器の需要低迷と在庫調整、JMDC株の再評価損などの120億円を挙げています。期末配当52円は、DOE基準と過去の配当水準を考慮して安定的・継続的な配当にしたという説明でした。
この期のフリー・キャッシュフローは62,221百万円のマイナスで、財務キャッシュフローは借入増などで85,987百万円のプラスです。配当性向はその後2期で下がり、その間の1株配当は104円のままでした。DOEの数字が3%前後で動かなくても、配当性向とキャッシュフローは大きく振れています。
配当性向100%超を見つけたら、利益が減った理由を読む
年間利益を超える配当は、その年の利益だけで配当額を説明できない状態です。ただし、1年だけ100%を超えたことから、翌年の減配を断定することはできません。損失の内容、過去に蓄積した資金、今後の投資や返済予定も関係するためです。住友金属鉱山とクレハの2例を見ると、理由の中身がまったく違います。
| 会社・決算期 | 1株配当 | 配当総額(百万円) | 親会社の所有者に帰属する当期利益(百万円) | 配当性向 | 減損損失(百万円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 住友金属鉱山 2025年3月期 | 104円 | 28,589 | 16,487(71.9%減) | 173.4% | 112,671 |
| 住友金属鉱山 2026年3月期 | 228円 | 61,686 | 176,290 | 35.1% | ― |
| クレハ 2025年3月期 | 86.70円 | 4,431 | 7,800 | 57.9% | ― |
| クレハ 2026年3月期 | 214円 | 8,178 | △10,693 | -(赤字) | 36,500 |
住友金属鉱山の2025年3月期は、配当性向が173.4%でした。減損損失112,671百万円のうち、Coral Bay Nickelが51,222百万円、電池材料事業が57,286百万円です。減損を開示した時点でも、1株104円の配当予想は変えていません。この期は、同社がまだDOEを導入する前にあたります。翌2026年3月期には利益が176,290百万円に戻り、配当性向は35.1%になりました。
クレハの2026年3月期は、DOE5%を目安とする新方針の初年度に赤字となった例です。減損損失36,500百万円のうち33,996百万円がフッ化ビニリデン樹脂事業で、EV市場の停滞による車載用リチウムイオン電池バインダー需要の回復遅れが理由とされています。それでも1株配当は前期の86.70円から214円に増えました。同じ期には自己株式取得39,057百万円があり、有利子負債は86,011百万円から124,225百万円に増えています。
次に、決算説明資料で一時的な費用か本業の低下かを確かめ、営業キャッシュフロー、現預金、設備投資、借入返済と配当支払いを並べます。利益があっても、現金を必要な時期に使えるとは限りません。「ROEがDOEを上回る」「配当性向が一定以下」という条件は、減配を防ぐ保証になりません。これらの数値は、変化を見つけて会社の説明を確かめるきっかけとして使います。
同じDOEでも、分母に何を含めるかが違う
2026年10月8日に確認したSUBARUの株主還元方針では、DOEの基準を親会社所有者帰属持分とし、為替などで変動する「その他の資本の構成要素」を除くと説明しています。京セラの配当方針も、DOEで用いる株主資本から「その他の資本の構成要素」を除く書き方です。貸借対照表にある純資産の合計を、そのまま分母にすればよいとは限りません。
計算時点も会社ごとに違います。大同特殊鋼は株主資本を「その他の資本の構成要素を除外した親会社所有者帰属持分」と定め、支払配当を前期末の株主資本で割ると注記しました。住友金属鉱山も、確定値である前期末の株主資本を使うとしています。オムロンは期首と期中の各四半期末の株主資本の平均値、クレハは2027年3月期の予想を予想株主資本を前提に算定しています。
| 会社 | 方針のDOEの分母 | 短信の持分配当率(2026年3月期) | 会社定義に沿ったDOE(2026年3月期) |
|---|---|---|---|
| 大同特殊鋼 | 前期末の株主資本(その他の資本の構成要素を除く) | 2.2% | ― |
| 住友金属鉱山 | 前期末の株主資本(その他の資本の構成要素を除く) | 3.2% | 約4.31%(にーと試算) |
| オムロン | 期首と各四半期末の株主資本の平均 | ― | 2.6%(会社公表の株主資本配当率) |
| クレハ | 連結株主資本(2027年3月期予想は予想株主資本) | 5.0% | ― |
住友金属鉱山の2026年3月期で、短信の持分配当率3.2%と会社定義のDOEを比べた結果が次の計算です。配当総額61,686百万円を、2025年3月期末の親会社所有者帰属持分1,845,737百万円から同期末の「その他の資本の構成要素」413,613百万円を除いた1,432,124百万円で割ると、約4.31%です。同じ会社の同じ年でも、分母の取り方で1ポイント以上違います。大同特殊鋼とクレハは、会社定義に沿った値を確認できていないため「―」としました。
会社間でDOEを比べるときは、項目名、期首・期末・平均のどれを使うか、除外項目の有無を書き出します。ここをそろえずに順位付けすると、配当の多さと計算方法の違いが混ざります。
配当が増えなくても、資本が減ればDOEは上がる
年間配当40億円を固定したまま、計算に使う資本が1,000億円から900億円へ減ると、DOEは4%から約4.44%に上がる計算です。この例では配当総額は増えていません。資本の増減には利益や配当、自己株式取得など複数の要因が関係するため、DOEやROEが上がったときは、配当が増えたのか分母が小さくなったのかを分けて確かめます。
クレハの2025年3月期から2026年3月期にかけては、両方が同時に動きました。短信の持分配当率は2.1%から5.0%へ上がっています。分子の配当総額は4,431百万円から8,178百万円に増え、分母側の親会社所有者帰属持分は期末で209,372百万円から165,233百万円に減りました。分子と分母のどちらがどれだけ動いたかで、DOE上昇の意味は変わります。この期は赤字で、自己株式取得39,057百万円もあった年です。持分配当率5.0%は会社が目安とするDOE5%と同じ値ですが、短信の分母は期中平均の持分なので、方針のDOEと同じ計算とは限りません。
1株配当と配当総額の伸び方も一致していません。1株配当は86.70円から214円で約2.5倍、配当総額は約1.8倍です(にーと試算)。株数が変わる年は、配当総額と1株当たり配当を別々に見る必要があります。
逆に、DOEを一定に保つ方針でも、基準となる資本額が変われば、計算上の配当総額も変わります。前期末の資本を分母にする会社なら、資本が減った翌年は、同じDOEでも配当総額は小さくなる計算です。DOEの数字だけで、翌年の1株当たり配当額は決まりません。
「目安」「下限」「累進」は、適用期間と条件まで読む
配当方針の数値を読むときは、いつからいつまでの方針か、何を下限とするのか、財務状況や投資計画をどう考慮するのかも確認します。「累進配当」という名称だけで、将来の配当が保証されるわけではありません。
| 会社 | 方針の中心 | DOEの位置づけ | 適用期間・条件 |
|---|---|---|---|
| クレハ | DOE(連結株主資本配当率) | DOE5%を目安 | 2025年5月12日の開示では2025年度・2026年度の2年間。2026年3月期決算短信では2027年度以降も5%を目安(想定以上の事業環境変化があれば見直し) |
| 住友金属鉱山 | 連結配当性向35%以上 | 下限指標DOE3.5% | 連結自己資本比率が適正水準55%を上回る間のみ。2026年3月期から |
| 大同特殊鋼 | 連結配当性向30%以上を目安 | 下限指標DOE2.5% | 2026年3月期から |
クレハは2025年5月12日の開示で、目標配当性向30%以上と、2025年度までは年間配当の下限を1株86.7円とするそれまでの方針を改めました。この開示で示したのは、2025年度と2026年度の2年間についてDOE5%を目安とする方針です。その後の2026年3月期決算短信では、2027年度以降もDOE5%を目安とし、想定以上の事業環境変化が生じた場合は配当率を機動的に見直すと説明しています。
住友金属鉱山の下限DOE3.5%は、自己資本比率55%超という条件付きです。2027年3月期の会社予想は1株207円で、2026年3月期の228円より少ない額でした。下限がある会社でも、前期の配当額を下回る予想は出ます。大同特殊鋼は2025年10月30日に下限DOE2.5%の導入を発表し、2026年3月期の予想を47円から49円に引き上げました。2027年3月期は、利益が32,605百万円から27,500百万円に減る予想のなかで、1株52円の予想です。
SUBARUの案内にも、DOEの設定とともに、毎期の業績、投資計画、経営環境を総合的に考慮する方針が示されています。方針を新しく採用した会社なら、その方針のもとでの実績はまだ短い可能性があるため、過去の配当額は採用前後で分けて見るのが確実です。株式分割や記念配当が含まれていないかも確認します。DOEと累進配当を併用する会社の一覧は、別の記事でまとめました。

DOEを配当方針に加える会社は2025年上半期に60件
DOEを採用する会社の累計数は、公的な統計では見つかりませんでした。代わりに使えるのが、大和総研の中村昌宏氏による「2025年上半期の配当方針等の変更と株価」(2025年7月3日)です。表題に「配当方針」「配当政策」「株主還元」「配当基準の変更」を含む開示を集計し、半期ごとにDOEを加えた件数と撤回した件数を数えています。
| 期間 | DOEを追加(他の方針からの変更を含む) | DOEを撤回 |
|---|---|---|
| 2022年1-6月 | 4件 | ― |
| 2022年7-12月 | 5件 | ― |
| 2023年1-6月 | 21件 | ― |
| 2023年7-12月 | 16件 | 1件 |
| 2024年1-6月 | 35件 | 1件 |
| 2024年7-12月 | 27件 | ― |
| 2025年1-6月 | 60件 | 2件 |
表は方針変更の開示件数を数えた二次集計で、DOE採用企業の累計ではありません。それでも、2022年上半期の4件から2025年上半期の60件まで増えた流れは読み取れます。2025年上半期に配当方針などを変更した企業は263社で、2009年以降の半期で最も多くなりました。
同じレポートは、2025年4月1日から5月15日に減益予想と増配予想を同時に出した会社を32社と数えています。2024年の同じ時期は15社でした。32社のうち10社がDOEで、継続採用を含めると19社です。株主資本は当期純利益より単年度の変動が小さいため、DOEのほうが配当性向より配当水準が安定しやすい、という整理も示されています。
この性質から、減益の年でも配当が減りにくい分、配当性向が高くなる年が出やすいといえます。オムロンの253.3%や、赤字の年に増配したクレハは、その形が数字に表れた例です。
配当を生活費に使うなら、減った場合の家計も計算する
DOEの確認は、会社の配当負担を読むための作業です。個人の家計では、実際の保有株数と税引き後の配当額から、生活費をどのくらいまかなえるかを計算します。
配当が減る幅は、会社予想からも試算できます。住友金属鉱山を100株持つ場合、2026年3月期実績228円なら税引前で22,800円、2027年3月期予想207円なら20,700円で、差は2,100円、率にして約9.2%の減少です(にーと試算)。下限DOEがある会社でも、会社予想の段階でこの程度の減配が示されることがあります。
複数銘柄を持っていても、似た業種に偏っていれば同時に業績が悪くなる可能性があります。住友金属鉱山の電池材料事業と、クレハの車載用電池バインダーは、どちらも電池向けの事業で減損を計上しました。予定どおりの配当だけでなく、受取額が減る場合の不足も出しておくと、配当方針の見直しが家計へ与える影響を把握できます。
DOE、ROE、配当性向の計算条件をそろえたうえで、配当方針の原文、適用期間、資金の使い道を確認します。DOEの高さだけでは、配当が今後も続くかどうかは判断できません。
本文の1,000億円・40億円などの数値は独自の仮定計算で、SUBARUや京セラの実績・配当予想を示すものではありません。各社の数値は百万円単位の公表値で、「にーと試算」と記した値は公表値からの計算です。
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。配当予想は将来にわたって保証されたものではなく、業績や方針の変化によって見直される可能性があります。投資判断はご自身の責任において行ってください。
参考にした公式情報
- SUBARU|株主還元方針(2026年10月8日確認)
- 京セラ|配当方針(2026年10月8日確認)
- 大同特殊鋼|株主還元方針の変更および配当予想の修正に関するお知らせ(2025年10月30日)
- 大同特殊鋼|2026年3月期 決算短信
- 大同特殊鋼|配当情報
- クレハ|配当方針の変更(DOEの導入)に関するお知らせ(2025年5月12日)
- クレハ|2026年3月期 決算短信
- 住友金属鉱山|配当について
- 住友金属鉱山|2025年3月期 決算短信
- 住友金属鉱山|2026年3月期 決算短信
- オムロン|2024年3月期 決算短信
- オムロン|2025年3月期 決算短信
- オムロン|2026年3月期 決算短信
- 大和総研|2025年上半期の配当方針等の変更と株価(2025年7月3日)
情報確認日:2026年10月18日(SUBARU・京セラは2026年10月8日)


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