「不労所得だけで生活している人は、実際どれくらいいるのだろう」——配当金や分配金、家賃収入といった言葉を目にするたび、そう思ったことがあるかもしれません。SNSでは「配当金で生活しています」という発信も見かけますが、それが世の中の何%にあたる話なのかは、なかなか見えてきません。
まず「不労所得だけで生活している人の割合」を直接示す統計が存在するのかを整理し、そのうえで公的なデータから逆算して「生活費を不労所得で賄うには何が必要なのか」「その条件を満たしうる世帯はどのくらいあるのか」を具体的な数字で確認していきます。断定できない部分は、断定できないものとしてそのまま書きます。
最終更新日:2026年7月30日
この記事は公表統計と一般的な考え方の解説を目的としたもので、特定の投資手法や金融商品を推奨するものではありません。税金・社会保険の取り扱いは個々の状況によって異なり、制度は改正されることがあります。実際の判断にあたっては、最新の公的情報や、必要に応じて専門家への相談をご検討ください。
結論:「不労所得で生活している人の割合」を示す公的統計は存在しない
最初に、いちばん大事な点をお伝えします。「不労所得だけで生活している人が日本に何%いるか」を直接示した公的統計は、現時点で見当たりません。
理由は主に2つあります。
- 「不労所得」という統計上の区分がない:総務省の家計調査には「財産収入」という収入項目があり、家賃・地代や利子・配当がここに含まれます。ただしこれは金額の内訳であって、「その世帯が財産収入だけで暮らしているか」を判別する項目ではありません
- 「働いていない」の定義が難しい:資産収入がありつつ月に数日だけ働く人、法人からの役員報酬を受け取っている人、家族の収入と合算している世帯などは、どこで線を引くかで数字が大きく変わります
ネット上で見かける「○%」の扱い方
検索すると「不労所得だけで生活している人は日本人の○%」といった数字が出てくることがありますが、出典をたどれないものが多いのが実情です。元となる調査名・調査年・サンプル数が示されていない数字は、そのまま信じるのではなく「出所が確認できるか」を見てから判断するのが安全です。
そこでこの記事では、割合そのものを言い当てるのではなく、①生活費を不労所得で賄うにはいくら必要か(計算で出せる部分)と、②その金額の金融資産を持つ世帯はどのくらいあるか(公表統計で確認できる部分)という2つの手がかりから、輪郭をつかんでいきます。
手がかり①:生活費を不労所得だけで賄うのに必要な資産額
まず「いくら必要か」です。ここは実際の家計データと算数で、かなり具体的に出せます。
日本の平均的な生活費(実データ)
総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、1か月あたりの消費支出は次のとおりです。
- 二人以上の世帯(平均世帯人員2.87人・世帯主の平均年齢60.7歳):月314,001円 → 年間約377万円
- 単身世帯(平均年齢58.6歳):月173,042円 → 年間約208万円
(出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」p.4およびp.17。家計調査 家計収支編 月次・年次結果)
なお、消費支出には税金や社会保険料(非消費支出)が含まれていません。会社を辞めれば国民健康保険料・国民年金保険料・住民税を自分で負担することになるため、実際に必要な年間支出はこの金額よりも大きくなります。退職後に何をどの順番で切り替えることになるのかは、次の記事で手続きと保険料の目安を整理しています。

「年間支出の25倍」で見た場合
FIREの文脈でよく使われる目安が「年間支出の25倍」です。これは資産の4%を毎年取り崩す前提(いわゆる4%ルール)から導かれる数字で、用語そのものの意味と種類は次の記事で整理しています。

この4%という数字は米国の研究が出発点で、日本の税制や年金制度、新NISAの枠組みにそのまま持ち込めるかは別の論点になります。どこがずれるのかは次の記事で扱っています。

「配当・分配金だけで賄う」場合はハードルが上がる
ここで注意したいのは、「25倍ルール」は元本の取り崩しを含んだ考え方だという点です。「元本には手をつけず、配当金や分配金だけで生活したい」となると、必要額はさらに大きくなります。
理由は2つです。
- 配当利回りは4%より低いことが多い:利回りが3%なら、必要資産は「年間支出÷3%」=約33倍になります
- 課税される:上場株式等の配当・分配金には原則20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)がかかります。手取りで年間300万円が欲しければ、税引前では約376万円を受け取る必要があります
これを実際の平均支出に当てはめると、次のようになります。
| 年間支出(消費支出ベース) | 25倍ルール (取り崩し併用) |
配当のみ 利回り4%・課税口座 |
配当のみ 利回り3%・課税口座 |
|---|---|---|---|
| 約208万円(単身世帯の平均) | 約5,200万円 | 約6,500万円 | 約8,700万円 |
| 約377万円(二人以上世帯の平均) | 約9,400万円 | 約1億1,800万円 | 約1億5,800万円 |
※税引後の受取額が年間支出と等しくなる資産額を、20.315%課税で計算した試算例です。運用の変動・増配や減配・為替・インフレは考慮していません。
「NISAを使えば非課税だから、もっと少なくて済むのでは」という発想はもっともです。ただし新NISAの生涯投資枠は1,800万円(うち成長投資枠1,200万円)が上限のため、1億円規模の資産すべてを非課税にすることはできません。大部分は課税口座で持つことになる、という前提で考えておくほうが現実的です。どちらの口座から先に使うかで手取りが変わる論点は、次の記事にまとめています。

手がかり②:その金額の金融資産を持つ世帯はどのくらいあるか
次に「では、1億円前後の金融資産を持つ世帯はどれくらいあるのか」です。ここは公表統計で確認できます。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯調査)」は、全国5,000世帯(世帯主が20歳以上80歳未満で世帯員2名以上)を対象に、2025年6月20日〜7月2日にインターネットモニター調査として実施されたものです。
この調査で公表されている金融資産保有額は、平均1,940万円・中央値720万円。同調査p.14の「BOX2 平均値と中央値」も、平均値は少数の高額資産保有世帯によって大きく引き上げられることがあると注意を促しています。実感に近いのは中央値のほうです。
「3,000万円以上」「1億円以上」の読み方には注意が必要
同じp.14に「金融資産保有額別世帯数」という表があり、「0」から「1億円以上」までの階級ごとに世帯数が載っています。ただしこの表の階級は「〜3000万円未満」「〜3500万円未満」のように区間で区切られたもので、「3,000万円以上」「6,000万円以上」といったまとまりは表にそのまま載っているわけではありません。該当する階級を足し合わせて初めて出てきます。
そして足し合わせた数字は、入れ子の関係になります。「3,000万円以上」の中には「6,000万円以上」が含まれ、その中に「1億円以上」が含まれます。3つを並べて足すと二重計上になるので、次の表では包含関係がわかる形で示します。
| 金融資産保有額 | 該当世帯数 | 5,000世帯に対する割合 |
|---|---|---|
| 0円(金融資産非保有) | 784世帯 | 約15.7% |
| 3,000万円以上(下の2行を含む) | 940世帯 | 約18.8% |
| └ うち6,000万円以上(下の1行を含む) | 376世帯 | 約7.5% |
| └ うち1億円以上 | 155世帯 | 約3.1% |
※「0」(784世帯)と「1億円以上」(155世帯)はp.14の表にそのまま載っている数字です。「3,000万円以上」(940世帯)は「〜3500万円未満」167+「〜4000万円未満」107+「〜4500万円未満」105+「〜5000万円未満」72+「〜6000万円未満」113+「〜7000万円未満」88+「〜8000万円未満」60+「〜9000万円未満」46+「〜1億未満」27+「1億円以上」155の合計、「6,000万円以上」(376世帯)は「〜7000万円未満」以降の合計として算出しました。割合の分母は、金額無回答100世帯を含む調査対象5,000世帯です。
(出典:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯調査)」p.14「金融資産保有額別世帯数」。調査結果の公表ページ)
なお同調査については2026年1月21日に訂正が公表されており、二人以上世帯調査の図表1のうち「有価証券」の値が755万円から727万円に修正されています。金融資産保有額の平均1,940万円・中央値720万円と、上記の保有額別世帯数は訂正の対象外です。この記事は訂正後に再掲載された版を参照しています。
この2つを重ねると何が見えるか
手がかり①では、二人以上世帯の平均的な支出を配当・分配金だけで賄うには1億円前後が必要という計算結果が出ました。手がかり②では、金融資産1億円以上の二人以上世帯は約3.1%でした。
ここから言えることは、次の点です。
- 金額の条件を満たしうる世帯そのものが、数%の水準にとどまる
- さらに、資産を持っていても働くのを完全にやめている人はその一部:1億円あっても現役で働いている人、事業をしている人は少なくないと考えられます
この2点から、「不労所得だけで生活している人」は、この数%よりもさらに小さい割合になると考えるのが自然です。ただしこれは公表データから読み取った見立てであり、確定した数字ではありません。また上記調査はインターネットモニター調査であり、回答者の属性の偏りが結果に影響する可能性がある点にも留意が必要です。
言い換えれば、「不労所得だけで生活する」は不可能ではないけれど、多数派になりうる選択肢ではないということです。これは悲観すべき話ではなく、設計の出発点を変えるための情報として使えます。
不労所得の種類によって、難しさの中身が変わる
「必要な金額」だけでなく、何で不労所得を作るかによっても現実味は変わります。代表的な3つを整理します。
配当金・分配金
株式の配当は、企業の業績や方針によって増えることも減ることもあります。「減配されない前提」で生活設計を組むと、想定が崩れたときに逃げ場がなくなります。配当そのものの仕組み・受け取り方・税金・利回りの計算方法は、次の記事で基礎から整理しています。

また、高い利回りを求めて銘柄や商品を選ぶと、元本の値動きリスクが大きくなりやすい点にも注意が必要です。特に毎月分配型の投資信託は、分配金の一部が元本の払い戻し(特別分配金)にあたる場合があり、「受け取れている」ことが必ずしも「増えている」ことを意味しません。この構造は次の記事で詳しく扱っています。

不動産の賃料収入
賃料は比較的安定した収入と言われますが、空室・家賃下落・修繕・入居者対応・原状回復といった実務が残ります。管理会社に委託しても判断は自分に返ってくるため、「完全な不労」とは言いにくい面があります。
その他(コンテンツ・権利収入など)
ブログや電子書籍、デジタル商品などの収入も「不労所得」と呼ばれることがあります。ただし多くの場合、収入を維持するには更新やメンテナンスが必要で、金融資産のように放置しても機能する性質ではありません。
現実的な着地点:「併用」なら必要資産は大きく下がる
ここまでの数字を踏まえると、「全額を不労所得で」ではなく「一部を不労所得で、残りを労働収入で」という設計が現実的な選択肢として浮かび上がります。これがサイドFIREやバリスタFIREと呼ばれる考え方です。両者は働き方も社会保険の扱いも違うので、次の記事で比較しています。

併用がどれだけ効くかを、数字で見てみます。月25万円(年間300万円)で暮らす場合の例です。
| 労働収入 | 資産で賄う年間額 | 25倍ルールでの必要資産 | 配当のみ(4%・課税口座) |
|---|---|---|---|
| なし | 300万円 | 7,500万円 | 約9,400万円 |
| 月10万円(年120万円) | 180万円 | 4,500万円 | 約5,600万円 |
月10万円を働いて得るだけで、必要資産は3,000万〜3,800万円ほど下がります。労働収入は金額が小さくても、必要資産に対しては25倍・33倍のレバレッジで効いてくる、という構造です。
勤務先で社会保険に加入できる働き方を残せば、保険料や将来の年金の面でも違いが出ます。労働時間や月収の水準によって扶養に残れるかどうかも変わるため、働き方を決めるときは金額だけでなく社会保険の区分も一緒に確認しておくと安全です。
自分の場合はどう考えればいいか(3ステップ)
「割合」を知りたかった方も、最終的に必要なのは自分の数字です。次の順番で考えると整理しやすくなります。
ステップ1:年間支出を出す(税・社会保険料を含めて)
必要資産はすべて年間支出から逆算されます。まず自分の1年分の支出を、家計簿アプリや通帳・カード明細から確認します。ここで税金と社会保険料を忘れないのが重要です。単身か夫婦かで必要額がどれだけ変わるかは、次の記事で試算しています。

ステップ2:不労所得で賄いたい割合を決める
「全額」なのか「半分」なのか「3割」なのかで、必要資産は数千万円単位で変わります。前章の表のとおり、労働収入を少し残す判断は必要資産を大きく引き下げます。全額を不労所得で賄う設計にこだわると必要資産が1億円規模まで跳ね上がるため、ここは早めに決めておくほうが動きやすくなります。
ステップ3:税引き後で逆算する
配当・分配金で賄う部分は、必ず税引き後の手取りで計算します。手取りベースの必要額は「年間支出 ÷ 0.79685 ÷ 想定利回り」でおおまかに出せます。元本の取り崩しも併用する場合は、資産が何年もつかというシミュレーションも合わせて確認しておくと安心です。取り崩し率別のモデルは次の記事に載せています。

不労所得生活を考えるときの注意点
最後に、金額の条件を満たした場合でも残るリスクを整理します。
- 減配・分配金の引き下げ:配当は企業の判断で変わります。「今の利回りが続く」前提は置かないほうが安全です
- インフレ:生活費が物価上昇で増えれば、同じ資産で賄える生活水準は下がります。年間支出が2割増えれば、必要資産も同じだけ増えます
- 相場下落と重なるリスク:資産が目減りしている局面で取り崩しを続けると、減り方が想定より早くなります
- 想定より資産が減ったときの選択肢:取り崩しの停止や再就職を含めて事前に考えておくと動きやすくなります
- お金以外の変化:働くのをやめたあとの時間の使い方や人間関係の変化も、実際に始めてから気づきやすい論点です
まとめ
この記事の要点を整理します。
- 「不労所得だけで生活している人の割合」を直接示す公的統計は見当たらない。「不労所得」に統計上の定義がなく、「働いていない」の線引きも難しいため
- 総務省「家計調査」2025年平均の消費支出は、二人以上の世帯が月314,001円(年約377万円)、単身世帯が月173,042円(年約208万円)
- これを配当・分配金だけで賄うと、課税(20.315%)と利回りの制約から、二人以上世帯で1億円前後〜1億5,000万円台、単身世帯で6,500万〜8,700万円という試算になる
- J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査 2025年(二人以上世帯)」p.14の分布から算出すると、金融資産1億円以上は約3.1%、6,000万円以上は約7.5%、3,000万円以上は約18.8%。ただしこの3つは入れ子の関係で、足し合わせる数字ではない
- 資産を持っていても働いている人が多いため、不労所得だけで生活している人はさらに小さい割合と考えられる(これは公表データからの見立てで、確定値ではない)
- 現実的な着地点は併用。月10万円の労働収入があるだけで、必要資産は3,000万〜3,800万円下がる
- 自分の数字は「①年間支出(税・社会保険料込み)→②不労所得で賄う割合→③税引き後で逆算」の順で組み立てる
「不労所得だけで生活する」は、割合で見ればごく少数派の選択です。ただし「生活費の一部を不労所得で賄う」まで幅を広げると、必要資産は一気に現実的な水準に下がります。割合を気にするより、自分の年間支出をひとつ確かめるほうが、次の一歩につながりやすいはずです。
※本記事は公表統計にもとづく一般的な情報の解説を目的としたものであり、特定の投資手法・金融商品を推奨するものではありません。記事内の必要資産額は、記載した前提(利回り・課税20.315%)にもとづく単純な試算例であり、将来の運用成果や生活費を保証するものではありません。税金・社会保険・年金などの制度は改正されることがあり、取り扱いは個々の状況によって異なります。実際の判断にあたっては、最新の公的情報をご確認いただくか、必要に応じて専門家へのご相談をご検討ください。


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