この記事の判断軸:FIREの資産寿命は、取り崩し率だけでなく、開始残高、年間支出、運用利回り、インフレ率、相場下落の順序、年金・労働収入を分けて入力し、前提を変えた複数ケースで比較します。
FIREを考えるとき、最後まで残る不安は「資産が何年もつのか」です。必要資産額を計算しても、退職後に毎年取り崩していけば、いつか資産は減ります。しかも、実際の生活では物価が上がり、医療費や家の修繕費も増え、相場が悪い年もあります。
この不安に対して、「4%ルールなら大丈夫」と一言で片づけるのは危険です。4%ルールは便利な目安ですが、もともとは主に30年程度の退職期間を想定した研究から広まった考え方です。30代・40代でFIREする場合、退職後の期間は50年、場合によっては60年以上になります。
この記事では、FIRE後の資産寿命を、取り崩し率、実質利回り、インフレ、暴落時の調整ルールに分けて試算します。結論から言うと、50年以上のFIREを前提にするなら、取り崩し率4%はかなり攻めた水準で、3%前後まで下げると安全余裕を作りやすくなります。
口座の順番も資産寿命と一緒に考える
資産が何年もつかを試算するときは、取り崩し率だけでなく、どの口座から現金化するかも前提になります。税金と非課税枠を含めた順番の考え方は、親記事で具体的に扱っています。
新NISAと特定口座の取り崩し順も、資産寿命を考える前提として確認してください。
※本記事は特定の金融商品・証券会社を推奨するものではありません。試算は簡略化したモデルに基づく参考値です。将来の運用成果、物価、税制、社会保険料、公的年金額は変わる可能性があります。実際の判断では、最新の公的情報と自分の家計データを確認してください。最終更新日:2026年8月13日
資産寿命は「残高 ÷ 年間支出」だけでは読めない
もっとも単純な資産寿命は、資産額を年間支出で割れば出せます。3,000万円を持っていて、年間支出が240万円なら、運用しなければ12.5年です。5,000万円で年間支出240万円なら20.8年、1億円で年間支出300万円なら33.3年です。
ただし、FIREではこの計算だけでは足りません。資産は運用され、支出はインフレで増え、相場が下がった年にも生活費は必要だからです。資産寿命は、少なくとも次の4つで決まります。
- 開始時点の資産額
- 年間支出額
- インフレを差し引いた実質利回り
- 暴落時に支出を下げられるか
ここで重要なのは、名目利回りではなく実質利回りで見ることです。名目で年5%増えても、物価が年3%上がれば、生活費に対する実質的な増え方は約2%です。総務省統計局の消費者物価指数は、家計が購入する財・サービスの価格変動を測る統計で、毎月公表されています。FIRE後の生活費を考えるなら、運用利回りだけでなく物価の上昇も同時に入れる必要があります。
試算の前提:実質利回りで資産寿命を見る
この記事では、計算をわかりやすくするために、税金や社会保険料を年間支出に含めた後の金額として扱います。運用利回りは、インフレを差し引いた実質利回りで0%、1%、2%、3%の4パターンを置きます。
| 前提 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 資産額 | 3,000万円、5,000万円、7,000万円、1億円 | 金融資産のみ。住宅や退職金は別枠で考える |
| 年間支出 | 180万円、240万円、300万円、360万円 | 税金・社会保険料込みの生活費として扱う |
| 実質利回り | 0%、1%、2%、3% | 名目利回りからインフレを差し引いた後の利回り |
| 取り崩し方法 | 毎年同じ実質額を取り崩す | 物価が上がれば名目の取り崩し額も増える |
| 暴落時の調整 | 基本表では考慮しない | 後半で支出調整ルールを別に扱う |
たとえば、名目利回り5%、インフレ率3%なら、単純引き算では実質2%に見えます。厳密には「1.05 ÷ 1.03 – 1」で約1.94%です。長期試算ではこの差も積み上がりますが、この記事では読みやすさを優先して実質利回り1%、2%、3%という丸い数字で見ます。
取り崩し率別:資産は何年もつか
まず、資産額を100とした場合に、毎年何%を取り崩すと何年もつかを見ます。ここでは毎年同じ実質額を取り崩す前提です。つまり、物価が上がれば生活費も同じ購買力を保つように増えるものとして扱います。
| 取り崩し率 | 実質利回り0% | 実質利回り1% | 実質利回り2% | 実質利回り3% |
|---|---|---|---|---|
| 2.5% | 40.0 | 51.3 | 81.3 | 尽きにくい |
| 3% | 33.3 | 40.7 | 55.5 | 尽きにくい |
| 3.5% | 28.6 | 33.8 | 42.8 | 65.8 |
| 4% | 25.0 | 28.9 | 35.0 | 46.9 |
| 4.5% | 22.2 | 25.3 | 29.7 | 37.2 |
| 5% | 20.0 | 22.4 | 25.8 | 31.0 |
表からわかるのは、取り崩し率4%は「実質利回りが0%なら25年」「実質利回り2%でも約35年」という水準だということです。30年程度の退職期間なら検討できても、50年・60年のFIREでは余裕が大きいとは言えません。
50年以上の資産寿命を狙うなら、実質利回り2%の前提でも取り崩し率3%前後がひとつの目安になります。取り崩し率3%なら実質利回り2%で約55.5年、実質利回り1%でも約40.7年です。ここに公的年金、配当、労働収入、支出調整が加われば、現実の耐久力はさらに変わります。
資産額と年間支出別のシミュレーション
次に、具体的な資産額と年間支出で見ます。FIREの相談で多いのは、「何%」という抽象的な数字より、「5,000万円で月20万円使ったら何年もつか」という生活費ベースの不安です。
| 資産額 | 年間支出 | 取り崩し率 | 実質0% | 実質1% | 実質2% | 実質3% |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 180万円 | 6.0% | 16.7 | 18.3 | 20.5 | 23.4 |
| 3,000万円 | 240万円 | 8.0% | 12.5 | 13.4 | 14.5 | 15.9 |
| 3,000万円 | 300万円 | 10.0% | 10.0 | 10.6 | 11.3 | 12.1 |
| 5,000万円 | 180万円 | 3.6% | 27.8 | 32.7 | 41.0 | 60.6 |
| 5,000万円 | 240万円 | 4.8% | 20.8 | 23.5 | 27.2 | 33.2 |
| 5,000万円 | 300万円 | 6.0% | 16.7 | 18.3 | 20.5 | 23.4 |
| 7,000万円 | 180万円 | 2.6% | 38.9 | 49.5 | 76.0 | 尽きにくい |
| 7,000万円 | 240万円 | 3.4% | 29.2 | 34.7 | 44.2 | 70.3 |
| 7,000万円 | 300万円 | 4.3% | 23.3 | 26.7 | 31.7 | 40.7 |
| 10,000万円 | 240万円 | 2.4% | 41.7 | 54.2 | 90.5 | 尽きにくい |
| 10,000万円 | 300万円 | 3.0% | 33.3 | 40.7 | 55.5 | 尽きにくい |
| 10,000万円 | 360万円 | 3.6% | 27.8 | 32.7 | 41.0 | 60.6 |
5,000万円で年間支出240万円なら、取り崩し率は4.8%です。運用しなければ20.8年、実質利回り2%でも27.2年です。これは老後30年の計算なら近い水準ですが、40歳からのFIREには短いです。
一方、7,000万円で年間支出240万円なら取り崩し率は3.4%になり、実質利回り2%で約44.2年、実質利回り3%で約70.3年です。1億円で年間支出300万円なら取り崩し率3.0%で、実質利回り2%なら約55.5年です。
資産寿命を伸ばす最短ルートは、利回りを無理に上げることではなく、年間支出を下げて取り崩し率を下げることです。年300万円の生活を年240万円に下げるだけで、同じ資産額でも資産寿命は大きく変わります。
4%ルールは「毎年残高の4%を売る」ではない
4%ルールでよくある誤解は、「毎年その時点の資産残高の4%を売る」という理解です。もともとの4%ルールは、初年度に開始資産の4%を取り崩し、翌年以降はその金額をインフレで調整する考え方です。
1億円でFIREした場合、初年度の取り崩しは400万円です。翌年の物価上昇が3%なら、2年目の取り崩しは412万円です。資産が9,000万円に減っていても、生活費を維持するために412万円を取り崩す前提になります。
この方法は生活費を安定させやすい一方で、暴落直後にはかなり厳しくなります。資産が下がっているのに、取り崩し額はインフレで増えるからです。これがシーケンスリスクです。平均利回りが同じでも、悪いリターンが退職直後に来るか、退職後20年目に来るかで、資産寿命は大きく変わります。
FIREでは30年ではなく50年・60年を確認する
金融庁は高齢社会に関する資料で、長寿化が進み、資産寿命の延伸が重要になっていると説明しています。一般的な老後資金でも資産寿命が課題になるなら、30代・40代でFIREする人はさらに長い期間を見なければなりません。
40歳で仕事を辞め、95歳まで生きるなら55年です。35歳なら60年、30歳なら65年です。厚生労働省の簡易生命表では平均寿命が公表されていますが、平均寿命は「その年齢まで必ず生きる」という意味ではありません。夫婦や家族単位で考えるなら、どちらか一方が長く生きる可能性もあります。
早期リタイア向けの安全取り崩し率を扱う研究でも、30年より長い期間では、同じ4%をそのまま使いにくいことが指摘されています。FIREでは「4%で30年もつか」ではなく、「3%前後で50年耐えられるか」を先に確認したほうが現実的です。
インフレは資産寿命を静かに削る
インフレの怖さは、初年度にはあまり目立たないことです。月20万円の生活費が、年2%ずつ上がると10年後には約24.4万円、20年後には約29.7万円になります。年3%なら20年後に約36.1万円です。
| 現在の月間生活費 | インフレ2%・10年後 | インフレ2%・20年後 | インフレ3%・20年後 | インフレ3%・30年後 |
|---|---|---|---|---|
| 15万円 | 約18.3万円 | 約22.3万円 | 約27.1万円 | 約36.4万円 |
| 20万円 | 約24.4万円 | 約29.7万円 | 約36.1万円 | 約48.5万円 |
| 25万円 | 約30.5万円 | 約37.1万円 | 約45.2万円 | 約60.7万円 |
| 30万円 | 約36.6万円 | 約44.6万円 | 約54.2万円 | 約72.8万円 |
インフレ込みで生活費を維持するなら、取り崩し額も増えていきます。だからこそ、資産寿命シミュレーションでは「名目の資産が何万円残るか」より、「同じ生活水準を維持できるか」が大事です。
逆に、FIRE後に支出の一部を物価に連動させない設計ができれば、耐久力は上がります。家賃のない持ち家、固定費の低い生活、趣味費を調整できる家計は、同じ資産額でも強くなります。
暴落時は取り崩しを止めるより、支出を段階的に下げる
資産寿命を延ばすうえで、暴落時の行動はかなり重要です。退職直後に株式市場が30%下がり、その状態で予定どおり取り崩すと、売却口数が増えます。その後に相場が回復しても、売ってしまった口数は戻りません。
ただし、生活費を完全に止めることはできません。現実的なのは、取り崩しをゼロにすることではなく、下げられる支出を一時的に下げることです。
| 状況 | 行動ルール | 目的 |
|---|---|---|
| 平常時 | 予定額どおり取り崩す | 家計の基準額を守る |
| 資産が開始時から20%以上減少 | 翌年の取り崩しを10〜20%下げる | 悪い相場で売る口数を減らす |
| 資産が開始時から30%以上減少 | 旅行・車・大型支出を1年延期 | 固定費ではなく変動費で調整する |
| 資産が開始時を上回って回復 | 支出を元の水準へ戻す | 節約を永続化しすぎない |
| 公的年金開始後 | 必要取り崩し額を再計算 | 年金分だけ売却額を下げる |
暴落時の支出調整は、普段から決めておかないと実行しにくいです。相場が下がってから考えると、不安で極端な節約か、逆に現実逃避のどちらかになりやすいからです。FIRE前に「下げる支出」と「下げない支出」を分けておくと、暴落時の判断が安定します。
資産寿命を伸ばす4つのレバー
資産寿命を伸ばす方法は、利回りを上げることだけではありません。むしろ、利回りは自分で完全にコントロールできません。自分で動かしやすい順に考えると、支出、収入、取り崩し率、運用リスクの順です。
支出を年60万円下げる
年間支出を300万円から240万円に下げると、必要な取り崩し額は年60万円減ります。資産5,000万円なら取り崩し率は6.0%から4.8%へ下がります。資産7,000万円なら4.3%から3.4%です。これはかなり大きい差です。
月5万円だけ働く
完全FIREにこだわらず、月5万円の収入を残すと、年間支出を60万円下げたのと同じ効果があります。年間支出300万円の人が年60万円稼げれば、資産から取り崩す金額は240万円です。資産5,000万円なら取り崩し率は6.0%ではなく4.8%になります。
公的年金開始後に再計算する
FIREの資産寿命は、公的年金開始前と開始後で分けて考える必要があります。65歳以降に公的年金が入れば、資産からの取り崩し額は下がります。40歳でFIREする人にとって、本当に厳しいのは40歳から65歳までの25年間です。そこを耐えれば、年金開始後は別の計算になります。
運用リスクを取りすぎない
資産寿命を伸ばしたいからといって、高リスク資産に寄せすぎるのは逆効果になることがあります。期待リターンは上がっても、退職直後の暴落に弱くなるからです。生活防衛資金、数年分の現金、債券や定期収入をどう持つかで、取り崩しの安定性は変わります。
ケース別の見方
同じ資産額でも、年齢と生活費で判断は変わります。ここではざっくりした読み方を示します。
| ケース | 資産寿命の見方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 30代でFIRE | 60年以上を確認したい | 3%でも安心とは言い切れない。副収入や支出調整が重要 |
| 40代でFIRE | 50年程度を確認したい | 取り崩し率3%前後を軸に、年金開始までの橋渡しを考える |
| 50代でFIRE | 35〜45年程度を確認したい | 退職金・年金・住宅費の有無で必要資産額が大きく変わる |
| サイドFIRE | 資産寿命より赤字幅を見る | 月5万〜10万円の収入があるだけで必要資産は大きく下がる |
| 配当金生活寄り | 配当と売却を分けて考える | 配当だけにこだわると銘柄集中や減配リスクが上がる |
FIREの資産寿命は、1つの数字で決めるものではありません。特に若い年齢で退職する場合、将来の働き方を完全にゼロにするより、必要なときだけ小さく稼げる状態を残すほうが強いです。
計算式:資産寿命は「実質利回り」と「取り崩し額」で決まる
資産寿命の計算は、考え方だけならシンプルです。運用しない場合は、開始資産を年間支出で割れば終わりです。5,000万円を持っていて年間240万円を使うなら、5,000万円 ÷ 240万円 = 20.8年です。
運用を続ける場合は、毎年の残高に実質利回りを掛け、その後に生活費を取り崩す形になります。ざっくり書くと、翌年の資産は「今年の資産 ×(1 + 実質利回り) – 年間支出」です。これを毎年繰り返すと、資産がいつゼロに近づくかを計算できます。
ここで大事なのは、取り崩し率が実質利回り以下なら、単純な一定利回りモデルでは資産が減りにくいという点です。たとえば実質利回り3%で、取り崩し率が3%なら、理屈の上では資産は横ばいに近くなります。だから表では「尽きにくい」と表示しています。
ただし、これは毎年同じ利回りが続く前提です。現実の市場では、実質利回り3%が毎年きれいに続くことはありません。+20%の年もあれば、-30%の年もあります。退職直後に悪い年が来ると、資産が減った状態で生活費を取り崩すため、平均利回りだけで見た試算より資産寿命は短くなります。
3,000万円・5,000万円・7,000万円・1億円で判断が変わる
FIREの資産寿命は、資産額だけでは決まりません。3,000万円でも年間支出が120万円なら25年もちますし、1億円でも年間支出が600万円なら16.7年です。資産額よりも、資産に対して毎年どれだけ使うかが重要です。
3,000万円の場合
3,000万円で完全FIREをするなら、年間支出180万円でも取り崩し率は6.0%です。実質利回り2%でも資産寿命は約20.5年にとどまります。30代・40代のFIRE資金としてはかなり厳しく、単独で生活費をすべて賄う前提には向きません。
ただし、サイドFIREなら話は変わります。年間支出240万円でも、月10万円の労働収入があれば資産からの取り崩しは年120万円です。この場合、取り崩し率は4.0%になります。3,000万円は完全FIRE資金というより、労働収入や配当収入と組み合わせる資金と考えたほうが現実的です。
5,000万円の場合
5,000万円はFIREを考える人にとってひとつの節目です。年間支出180万円なら取り崩し率3.6%で、実質利回り3%なら約60.6年です。一方、年間支出300万円なら取り崩し率6.0%となり、実質利回り2%でも約20.5年です。
つまり、5,000万円でFIREできるかどうかは、生活費次第です。家賃が低い、実家暮らし、持ち家、地方移住、夫婦で支出を共有できる、といった条件があるなら候補になります。都市部で家賃を払いながら年300万円以上使うなら、完全FIREよりサイドFIRE寄りにしたほうが資産寿命は安定します。
7,000万円の場合
7,000万円になると、年間支出240万円なら取り崩し率3.4%です。実質利回り2%で約44.2年、実質利回り3%なら約70.3年になります。40代FIREなら検討しやすい水準です。
ただし、年間支出360万円まで上げると取り崩し率は5.1%になり、実質利回り2%でも約24.9年です。資産額が増えると安心感は出ますが、生活費を上げすぎると資産寿命は一気に短くなります。
1億円の場合
1億円でも、年間支出によって安全度は大きく変わります。年間支出240万円なら取り崩し率2.4%で、実質利回り2%でも約90.5年です。年間支出300万円なら取り崩し率3.0%で、実質利回り2%なら約55.5年です。
一方、年間支出360万円では取り崩し率3.6%になり、実質利回り2%では約41.0年です。1億円あれば何でも安心というより、支出を年300万円前後に抑えられるかが、長期FIREの分かれ目です。
税金と社会保険料を後から足すと失敗しやすい
資産寿命の試算でよくあるミスは、生活費だけを入れて、税金と社会保険料を後から考えることです。会社員時代は給与から天引きされていたため、退職後に自分で払う感覚が薄くなりがちです。
FIRE後は、国民健康保険料、国民年金保険料、住民税、所得税が家計に入ってきます。退職直後は前年所得をもとに住民税や国保料が決まるため、想定より負担が重くなることがあります。さらに、特定口座を取り崩して利益が出れば税金もかかります。
資産寿命を計算する年間支出には、食費や家賃だけでなく、税金・社会保険料・医療費・家電買い替え費まで入れるべきです。生活費240万円のつもりでも、税金や保険料を入れると年300万円に近づくことがあります。この差は資産寿命に直撃します。
| 見落としやすい費目 | 年額の置き方 | 資産寿命への影響 |
|---|---|---|
| 国民健康保険料 | 市区町村と前年所得で変わる | 退職直後ほど重くなりやすい |
| 国民年金保険料 | 第1号被保険者なら自分で納付 | 夫婦なら2人分になる |
| 住民税 | 前年所得に対してかかる | 退職1年目の資金繰りに注意 |
| 医療費 | 年齢とともに増えやすい | 長期FIREでは後半ほど効く |
| 家電・車・住宅修繕 | 毎月ではなく数年ごとに発生 | 年間平均に直して入れる |
| 親族イベント・介護関連 | 読みにくい支出 | 予備費として別枠を持つ |
配当金や分配金がある場合の資産寿命
配当金や分配金がある人は、資産寿命を「生活費 – 税引後インカム」で計算すると現実に近づきます。年間支出300万円で、税引後配当が年60万円あるなら、資産売却でまかなう金額は240万円です。資産5,000万円なら取り崩し率は6.0%ではなく4.8%になります。
ただし、配当金を過信するのも危険です。企業業績が悪化すれば減配があります。毎月分配型投信の場合、分配金が元本払い戻しを含むこともあります。インカムを資産寿命に入れるなら、税引後の金額、減配時の下振れ、NISAか課税口座かを分けて計算する必要があります。
配当金を入れる場合は、私は3つの数字で見るのが実用的だと思います。通常時の税引後インカム、減配時の保守的なインカム、ゼロになった場合の資産寿命です。この3つを並べると、インカムに頼りすぎていないかが見えます。
資産寿命シミュレーションの使い方
資産寿命シミュレーションは、正解を出す道具ではありません。将来の利回りも物価も寿命もわからないからです。では何に使うのかというと、自分の家計がどの変数に弱いかを知るために使います。
たとえば、実質利回り2%なら大丈夫でも1%だと厳しいなら、利回りへの依存度が高い家計です。年間支出が240万円なら耐えられるのに300万円だと厳しいなら、支出管理が重要です。暴落時に支出を10%下げるだけで資産寿命が伸びるなら、柔軟な支出設計が効く家計です。
FIRE前に確認すべきなのは「何年もつか」そのものより、「何が崩れると資産寿命が短くなるか」です。弱点がわかれば、完全FIREではなくサイドFIREにする、現金比率を上げる、家賃を下げる、副業を残す、といった対策が取れます。
FIRE前に作っておきたい資産寿命チェックリスト
資産寿命を計算したら、最後にチェックリストへ落とし込みます。数字だけ眺めても、実際の行動に変わらなければ意味がありません。FIRE前に最低限確認したいのは次の項目です。
| 確認項目 | 合格ライン | 確認できていない場合の対策 |
|---|---|---|
| 年間支出 | 税金・社会保険料込みで把握できている | 過去12か月の支出を集計する |
| 取り崩し率 | 3%前後から試算している | 生活費を下げるか、サイド収入を残す |
| 現金比率 | 生活費2〜5年分の安全資金がある | 暴落時に売らない資金を作る |
| インフレ耐性 | 生活費が2〜3%上がる前提で確認済み | 固定費と変動費を分けて見直す |
| 暴落時ルール | 支出を下げる条件を決めている | 旅行・大型支出・娯楽費から調整する |
| 年金開始後 | 公的年金を入れた再計算をしている | 65歳前後で取り崩し額を見直す |
| 再就職余地 | 必要なら月5万〜10万円稼ぐ手段がある | 完全リタイアにこだわりすぎない |
特に重要なのは、現金比率と暴落時ルールです。資産寿命の表では毎年一定の実質利回りを置いていますが、現実の相場は一直線ではありません。退職直後に大きく下がった場合、数年分の生活費を現金で持っていれば、株式や投信を安値で売る回数を減らせます。
リタイア後も毎年1回は再計算する
FIREは、退職した瞬間に計算が終わるわけではありません。むしろ退職後のほうが、毎年の見直しが大切です。物価、税金、保険料、家族構成、親の介護、住宅修繕、相場環境は変わります。
おすすめは、年1回だけ資産寿命を再計算することです。毎月やると相場に振り回されますが、年1回なら家計の健康診断として使いやすいです。見る項目は、年初資産、年間支出、年間インカム、取り崩し率、現金残高、翌年の大きな支出予定です。
もし取り崩し率が想定より上がっているなら、早めに手を打ちます。支出を下げる、副収入を作る、旅行や大型支出を延期する、リスク資産の比率を見直す。小さい修正を早めに入れるほど、資産寿命へのダメージは小さくなります。
よくある質問
資産寿命は何年あれば安心ですか?
年齢によります。60歳前後なら30〜40年、40代なら50年、30代なら60年以上を確認したいところです。ただし、公的年金、持ち家、家族構成、医療費、働く余地で必要年数は変わります。
4%ルールを使えばFIREできますか?
4%ルールは便利な目安ですが、保証ではありません。特にFIREでは退職期間が長く、退職直後の暴落やインフレに弱くなります。この記事の試算では、50年以上を考えるなら3%前後の取り崩し率から確認するほうが現実的です。
インフレ率は何%で見ればいいですか?
固定の正解はありません。日本の過去だけを見ると低インフレの期間も長いですが、FIRE後の50年を考えるなら、1%、2%、3%の複数パターンで試算したほうが安全です。生活費のうち、食費、光熱費、医療費のように上がりやすい費目も分けて確認すると精度が上がります。
資産寿命を伸ばすには利回りを上げるべきですか?
利回りを上げようとすると、基本的にはリスクも上がります。まずは年間支出を下げる、月数万円の収入を残す、暴落時の支出調整ルールを決めるほうが再現性は高いです。
まとめ:FIREの資産寿命は3%前後から確認する
FIREの資産寿命は、資産額を年間支出で割るだけでは判断できません。インフレ、実質利回り、退職期間、暴落時の取り崩しが重なるからです。
今回の試算では、取り崩し率4%は実質利回り2%でも約35年でした。50年・60年を前提にするなら、3%前後まで下げて確認したほうが安全余裕を作りやすくなります。もちろん、実際には公的年金、配当、労働収入、支出調整が加わるため、表の数字だけで結論は出せません。
FIRE前に確認したいのは「資産が何年もつか」だけでなく、「悪い相場が来た年に、どの支出を下げられるか」です。ここまで決めておくと、資産寿命シミュレーションは単なる数字遊びではなく、実際の生活設計に使える判断材料になります。
参考にした公式情報・研究
- 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(2026年8月13日確認)
- 金融庁「高齢社会における金融サービスのあり方」(2026年8月13日確認)
- Early Retirement Now “Safe Withdrawal Rates: A Guide for Early Retirees”(2026年8月13日確認)
FIREの全体像に戻る
個別のテーマを確認したあと、FIREの種類や必要資金、退職後の制度を全体像から見直す場合はこちらです。
関連する前提は、FIREで資産が減ったときの対処、FIREの出口戦略でも確認できます。




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