サイドFIRE6年目の本音。後悔2つと、後悔しなかった3つ

6年前、資産3,000万円と配当月15万円で、40代で会社を辞めました。年収350万円の上場企業マーケ部、子なし夫婦、妻は会社員。この条件で、辞めたんですよ。当時の私は、不安の塊みたいな顔をして最終出社の日を迎えて、帰り道に一度だけ振り返ったのを覚えています。

「後悔してませんか?」と、よく聞かれるんですよね。してます。2つだけ。どっちもお金の話じゃなくて、辞める前の私が1ミリも想像していなかった種類の後悔なんです。

目次

辞めるのが、2年遅れた

先に事実だけ書かせてください。私は本当は辞められるタイミングから2年遅れて辞めました。3,000万円と月15万円の配当は、2年前にもう揃っていたんですよ。揃っていたのに、あの頃の私は「あと1年」と言って、1年経って、また「あと1年」と言って、それで2年です。

その2年で何が起きたかというと、資産はちょっと増えて、疲労もちょっと増えて、相殺して、差し引きほぼゼロでした。ゼロじゃない、マイナスだ。時間を2年、丸ごと会社のデスクで失くしたんだからね

サイドFIRE6年目 後悔vs良かったこと

後悔1: 会社の「面倒な時間」は、社会との細い糸だった

会社員時代、ランチも雑談も飲み会も、正直ぜんぶ面倒で、早く帰らせてくれとずっと思っていました。辞めて半年くらい経った頃に、ようやく気づいたんですよね。あれ、糸だったんだ、って。

平日の昼間に家に一人でいる時間って、想像の10倍くらい長いんですよ。誰とも喋らない日が普通にあって、妻が帰ってくるまで声を一度も出していない日があって、自分の声の出し方を忘れそうになる日すらあったんです。最初の3ヶ月は最高に静かで最高に快適でした。4ヶ月目くらいから、その静かさが、じわじわ重くなっていったんですよね。

孤独って、時間の長さの問題じゃなかった。「気にかけてくれる存在が何人いるか」の問題だったんですよ。会社員時代の私は、面倒だと思っていた同僚の数だけ気にかけられていて、気にかけられていることに気づかないまま、それを面倒がっていたわけです。いま書いていても、ちょっと情けなくなる話なんですけどね。

対策として、週2日のフリーランスを始めました。打ち合わせで人と話して、メールの返事が来て、締切に追われる、あの嫌だったはずの「誰かに急かされる感覚」が戻ってきた瞬間、私はちょっと嬉しかったんですよ。人間って社会的な生き物なんだなと、40代になって、家の居間で、ようやく実感した話です。

後悔2: 通勤は、運動だった

会社員時代、通勤だけで1日約6,000歩ありました。駅まで歩いて、階段を上って、オフィスの中を動き回って、それがぜんぶ運動だったんですよ。座り仕事だと思い込んでいた自分の1日は、下半身にとってはそこそこの運動量を持っていた。辞めてから初めて、それを知りました。

サイドFIRE後、1日2,000歩を切る日が出てきました。家から出ない日があって、食材はまとめ買い、郵便はポストまで、終わり。

半年で体重が3キロ増えて、階段で息が切れるようになりました。40代で一回なまると、戻すのが本当にしんどいんですよ。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によると、成人は1日約8,000歩相当が推奨されていて、通勤だけでほぼクリアしていた数字を、私は辞めてから初めて知ったんです。

FIRE後の体って、通勤という「勝手にやってくれる運動」を失った瞬間にデフォルト値が書き換わるんですよ。辞めたその日から、運動のベースラインが自動でマイナスに切り替わって、何もしないこと自体が下り坂になる。ここが落とし穴でした。対策としてジムに週2回と1日30分の散歩を入れて、半年かけて体重は戻したんですけど、会社員時代の私が先に運動習慣を作っておけば、ゼロから立て直す必要はなかったんですよね。

後悔しなかった1: 目覚ましをかけない朝は、6年経っても飽きない

平日の昼にスーパーに行くと、空いてるんですよ。平日の昼に病院に行くと、待ち時間が短いんですよ。平日の昼に散歩に出ると、すれ違う人が少ないんですよ。こう書くと地味なんですけど、これが会社員時代には絶対にできなかったことなんです。

この「時間の自由」は、6年経った今もまったく飽きていません。慣れるだろうと思っていたんですけど、慣れませんでした。目覚ましをかけない朝に自然に目が覚める瞬間、いまだに「あ、今日も自由だ」と思うんですよ。6年経っても、です。

後悔しなかった2: 月曜が、怖くなくなった

会社員時代の日曜の夜、お腹の奥に重いものが落ちてくる、あの感覚。「明日、月曜か」と思うと、食欲もテレビの音量も一段下がる、あの感覚です。辞めたら、あれが消えました。上司の顔色を読まなくていいし、理不尽な会議に座らなくていいし、満員電車に押し込まれなくていいんですよね。

ここが大事なんですけど、ストレスはゼロにはなっていません。投資の含み損はキツいし、フリーランスの納期は胃が痛い。でも、種類が変わったんですよ。上司の機嫌は動かせないけど、納期は自分で動かせる。含み損はしんどいけど、銘柄は自分で選んだ。自分でコントロールできる範囲のストレスに変わった、ということなんです。

慢性的な肩こりと頭痛が、辞めて半年で消えました。病院にも行かず、薬も飲まず、ただ消えたんですよ。あの頭痛、ストレスだったんだな、と、無くなってから分かるやつです。

後悔しなかった3: 妻との夕食が、6年分増えた

うちはDINKsで、子どもはいません。私にとっての家族は妻一人だからね。会社員時代の帰宅は21時過ぎで、妻もその頃まで働いていて、平日にゆっくり話す時間はほぼゼロでした。休日にまとめて喋る、みたいな感じだったんですよ。

今は、妻が帰ってくる時間に夕食を準備して待っています。毎日です。先日、妻に「あなたが家にいてくれるおかげで、家のことが回ってる」と言われたんですけど、これは年収350万円時代の私には一生言われなかったセリフなんですよね。あの頃の私は、妻に「ごめん、今日も遅くなる」とLINEを打つ係だったんだから。

後悔しなかったことを振り返ると、行き当たりばったりではなく、計画的に準備して辞めたからこそ、こうして冷静に損得を数えられているという気もします。私が実際に歩いた準備の道筋は「サイドFIREまでの5フェーズロードマップ」にまとめました。

6年で、資産は3,000万から5,000万になった

数字の話を少しだけ。サイドFIRE後、資産は取り崩すどころか増え続けました。3,000万円は約5,000万円になり、配当は月15万円から月20万円になったんですよ。内訳は、配当の再投資、週2日のフリーランス収入の余剰、そして市場の成長です。高配当株中心で、増配銘柄を選んで握ってきた結果ですね。

週2日のフリーランスで生活費の一部をまかないつつ、余剰は投資に回す。この回し方が、結果的に資産を増やしてくれました。「サイドFIREしたら取り崩していくだけ」という世間のイメージは、私の場合は当てはまらなかったということなんです。制度面では金融庁のNISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」が入り口として分かりやすくて、私が辞めた当時より今の新NISAは制度としてかなり強くなっていますね。

※個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

6年前の自分に伝えたい、ひとつのこと

ここだけは、少し声を大きくして書かせてください。6年前の、会議室で「あと1年」とつぶやいていた自分に、どうしても言っておきたいことがあるんですよ。

3,000万円と月15万円の配当が揃ったあの時点で、あなたはもう辞められたんです。揃っていました。数字は全部、机の上に並んでいたんですよ。なのに、あなたは「あと1年」と言って、その1年が経って、同じ言葉をもう一度口にしました。2回です。それで、2年。あの2年の平日の朝、あなたが何をしていたか覚えてますかと聞かれたら、たぶん覚えてないですよね。覚えてないんですよ。覚えていないほどに、同じ朝が2年分ただ繰り返されて、目覚ましに起こされて、駅まで歩いて、満員電車に押し込まれて、会議室に座って、上司の顔色を読んで、帰ってきたら妻はもう寝ていて、風呂に入って、寝る、その同じ1日が2年分ただコピー&ペーストで積み上がっただけで、そこには本当に、本当に、本当に何もなかったんですよ。資産のグラフだけが、ちょっと右に伸びた。あなたの体は、ちょっと重くなった。あなたの肩と頭は、ちょっと痛くなった。それだけです。

過去の自分を雑魚扱いしたくはないんですけどね、でも、あの時の私は本当に頭が悪かった。数字は読めるくせに、数字が示していたゴーサインが読めなかったんですよ。「3,000万円と月15万円」の意味が、本当は分かっていなかったんです。分かっていたら、辞めていたはずだからね。あの2年は、妻と夕食を食べられた2年でもあって、目覚ましをかけなくてよかった2年でもあって、日曜の夜を怖がらずに済んだ2年でもあったんです。ぜんぶ、会社のデスクで失くしたんですよ。

お金は、貯められます。増やせます。現に、辞めてからの6年で2,000万円増えたんですよ。でも、時間は、買い戻せない。もしこの記事を今まさに「あと1年」と言っている人が読んでいるなら、その1年で増える資産と、失う時間を、紙に書いて並べてみてほしいんです。私は書かなかったから2年失くしました。だからあなたは、書いてほしい。

もう遅らせるな。辞めろ。

もうひとつ。体だけは、先に作っとけ

2つ目の伝言はこれです。体だけは、辞める前に作っておいてほしい。会社員時代は通勤が勝手に運動してくれていて、辞めた瞬間にその運動がゼロになる、というのを私は想像できていなかったんですよ。

FIRE後は、健康診断も勝手には来ません。会社が呼んでくれていた健診が、自分で予約する健診に変わるんです。面倒で先延ばしになるんですよね、これが。ジムも散歩も、自分で習慣化しないと誰も代わりにやってくれないんだから。お金の設計と同じくらい、体の設計をしておけばよかったと、ここは本気で後悔しています。

サイドFIREのゴールは、辞めることじゃない。選べることだ

後悔を2つ書きましたけど、6年経った今の私に「会社員に戻りますか?」と聞かれたら、答えは即答で「戻りません」です。後悔した2つは、どっちも対策で消えました。孤独はフリーランスで、運動不足はジムと散歩で。消せる後悔だったんですよ。一方、後悔しなかった3つ、時間の自由・ストレスの質・妻との時間、これは会社員に戻ったら全部失うものです。こっちは消せない種類のものなんですよね。

社会保険のことも含めて、辞める前に準備すべき実務は別にあります。国民健康保険が高すぎる理由と最新制度あたりは、退職前の私が読んでおきたかった記事ですね。

サイドFIREのゴールは、「会社を辞めること」じゃない。「何をやめて、何を残すかを、自分で選べること」だ。6年経って、やっと、こう書けるようになりました。

もしあなたが今、6年前の私と同じ会議室で「あと1年」とつぶやいているなら、その1年で増える資産と、失う時間を、紙の右と左に書いて並べてみてほしいんです。並べたら、たぶん答えが出ますよ。私は並べなかったから2年失くした側の人間なので、これは本気でお願いしているんです。今日読んでくれて、ありがとうございました。

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