6年前、資産3,000万円・配当月16万円の状態で会社を辞めた。40代、年収350万円、子なし夫婦。いわゆるサイドFIREというやつだ。
当時はかなり不安だった。3,000万円で本当に大丈夫なのか。配当が減ったらどうするのか。周囲に「もったいない」と言われるたびに心が揺れた。
それから6年。現在の資産は約5,000万円、配当は月27万円まで増えた。週3日のフリーランスの仕事もしている。
「サイドFIRE 後悔」で検索する人が多いと聞いた。正直に書く。後悔したことはある。でも、後悔しなかったことのほうが圧倒的に多い。
後悔したこと① 社会的つながりが一気に減った
会社を辞めて最初に感じたのは、「話す相手がいない」ということだった。
会社員時代は、特に意識しなくても同僚と雑談していた。ランチも一緒に行ったし、飲み会もあった。正直、面倒だと思っていた時間のほうが多い。でも辞めてみると、あの「面倒な時間」が実は社会との接点だったと気づいた。
サイドFIREした直後は、平日の昼間に一人で家にいる時間が長かった。妻は仕事に出ている。テレビをつけても、なんとなく孤独を感じる。
「暇すぎる」というのとは少し違う。やることはある。投資の勉強、読書、家事。でも「誰かと関わっている」という感覚が決定的に足りなかった。
これは想定していなかった。FIRE前は「人間関係のストレスから解放される」としか考えていなかったからだ。解放されたのは事実だが、同時に「ゆるいつながり」まで手放してしまった。
対策として、週3日のフリーランスの仕事を始めた。収入目的というより、社会との接点を持つためだ。これで孤独感はかなり解消された。今振り返ると、最初からセミリタイア(完全リタイアではなく一部働く形)を選んだのは正解だったと思う。
後悔したこと② 運動不足で体がなまった
会社員時代は、通勤だけで1日6,000歩くらい歩いていた。駅までの往復、乗り換え、オフィス内の移動。意識しなくても体を動かしていた。
サイドFIREして在宅中心になると、1日の歩数が2,000歩を切る日が出てきた。家からコンビニに行くくらいしか歩かない日もある。
半年ほどで体重が3キロ増えた。階段を上ると息が切れるようになった。40代で体力が落ちるスピードは、想像以上に速い。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は1日60分以上(約8,000歩相当)の身体活動が推奨されている(参考: 厚生労働省「身体活動・運動の推進」)。サイドFIRE生活では、意識しないとこの基準を大幅に下回る。
現在はジムに週2回通い、それ以外の日は30分の散歩を日課にしている。体重は元に戻り、体調も良い。ただ、FIRE前にこの習慣を作っておけばよかったというのが正直な気持ちだ。
後悔しなかったこと① 時間の自由
後悔しなかったことのほうが圧倒的に多い。まず時間の自由。これだけでサイドFIREした価値がある。
平日の昼間にスーパーに行ける。空いている時間帯に病院に行ける。天気の良い日にふらっと散歩に出られる。こう書くと地味だが、会社員時代には絶対にできなかったことだ。
一番大きいのは「目覚ましをかけない生活」だと思う。6年経った今でも、朝自然に目が覚める瞬間に幸せを感じる。8時間寝ても誰にも文句を言われない。
時間に追われない生活は、精神的な余裕を生む。「あと10分で出ないと電車に間に合わない」というプレッシャーがないだけで、朝の気分がまったく違う。
後悔しなかったこと② ストレスの激減
会社員時代のストレスは、自分で思っていたよりずっと大きかった。辞めてから気づいた。
日曜の夜に「明日月曜か」と憂鬱になることがなくなった。上司の顔色をうかがうことも、理不尽な会議に出ることも、満員電車で押しつぶされることもない。
体にも変化が出た。会社員時代は慢性的な肩こりと頭痛があったが、辞めて半年で両方なくなった。病院に行く回数も減った。ストレスが体に出ていたのだと思う。
ただし「ストレスゼロ」ではない。投資の含み損が膨らんだ時期は不安になったし、フリーランスの仕事で納期に追われることもある。でも、会社員時代の慢性的なストレスとは質が違う。自分でコントロールできる範囲のストレスだからだ。
後悔しなかったこと③ 家族との時間
DINKs(子なし夫婦)なので、家族との時間といっても妻との時間だ。
会社員時代は、平日に妻とゆっくり話す時間はほとんどなかった。帰宅は21時過ぎ、食事をして風呂に入って寝るだけ。休日も疲れて寝ているか、たまった家事を片づけるか。
サイドFIREしてからは、妻が仕事から帰ってくる時間に夕食を準備して待っている。平日の夜に映画を観たり、休日に日帰り旅行に行ったり。そういう「普通のこと」ができるようになった。
妻は今も会社員として働いているが、「あなたが家にいてくれるおかげで家のことが回っている」と言ってくれる。DINKsでサイドFIREする場合、片方が働き続けることで社会保険の面でもメリットがある。
6年で変わったこと——資産3,000万円から5,000万円へ
サイドFIRE時の資産3,000万円が、6年で約5,000万円になった。内訳は、配当の再投資とフリーランス収入の積み上げ、そして市場の成長だ。
配当金は月16万円から月27万円に増えた。高配当株を中心に、増配銘柄を選んできた結果だ。
フリーランスの週3日勤務による収入も、生活費の一部をまかないつつ、余剰分を投資に回している。「サイドFIRE」という形を選んだことで、資産を取り崩すどころか増やし続けられている。
資産形成において、長期・分散投資の重要性は金融庁も繰り返し発信している(参考: 金融庁「NISA特設ウェブサイト 資産形成の基本」)。新NISAの非課税枠を活用しながら、配当再投資を続ける方針は今後も変えないつもりだ。
正直なところ、3,000万円でスタートした時は心もとなかった。でも、配当収入+労働収入という「二本柱」があれば、資産は減るどころか増えていく。これはサイドFIREの大きな強みだと実感している。
FIRE前の自分に伝えたい2つのこと
もし6年前の自分にアドバイスできるなら、伝えたいことは2つだ。
もっと早く辞めればよかった
これは本心だ。辞める前は「あと1年、あと1年」と先延ばしにしていた。資産がもう少し増えてから。配当がもう少し安定してから。そう言い訳して、2年くらい決断を遅らせた。
振り返ると、あの2年間は必要なかった。3,000万円と月16万円の配当で十分スタートできた。先延ばしした2年間の「時間」は、お金では買い戻せない。
ただし、これは結果論でもある。退職前の準備として配当金生活の基盤を作っておくことは大切だ。
体づくりだけはしておけばよかった
前述の通り、サイドFIRE後に運動不足で体調を崩した。会社員時代から運動習慣を作っておけば、スムーズに移行できたと思う。
FIRE後の生活は「体が資本」だ。会社の健康診断もなくなる。自分で健康を管理する意識が必要になる。これからサイドFIREを考えている人がいるなら、お金の準備と同じくらい、体の準備もしておいたほうがいい。
まとめ——サイドFIREを後悔しているか
結論として、サイドFIREを後悔していない。
後悔したことはある。社会的つながりの減少と運動不足。この2つは想定外だった。でも、どちらも対策可能な問題だった。フリーランスの仕事とジム通いで、今は解消している。
一方、手に入れたものは大きい。時間の自由、ストレスからの解放、家族との時間、そして資産が増え続けているという安心感。
「サイドFIRE 後悔」で検索しているなら、おそらく今、辞めるかどうか迷っている段階だと思う。自分の経験から言えるのは、「後悔するかどうか」は準備と対策で大きく変わるということだ。
配当金がいくら入るのか。月々の生活費はいくらかかるのか。社会的つながりをどう維持するのか。運動習慣をどうするのか。お金以外の部分も含めて準備すれば、サイドFIREで後悔する確率はかなり下がる。
少なくとも、6年前の自分に「辞めるな」とは絶対に言わない。「もっと早く辞めろ」と言う。
※本記事は筆者個人の体験に基づくものであり、特定の投資手法や銘柄を推奨するものではありません。筆者はFP等の資格を持っていません。資産設計については専門家にご相談ください。

コメント