年収350万の会社員が資産3,000万でFIREするまでにやったこと【6フェーズ完全ロードマップ】

「サイドFIRE やり方」で検索すると、4%ルール、必要資産額、高配当株ポートフォリオ——情報はいくらでも出てくる。

でも本当に知りたいのは、そういう話ではなかった。

「具体的に、何を、どの順番でやればいいのか。」

私がサイドFIREを目指し始めたとき、まさにこれがわからなかった。「まず投資を始めろ」と言う人もいれば「まず支出を減らせ」と言う人もいる。iDeCoの話をする人もいれば、副業の話をする人もいる。どれも正しそうに見えるのに、全部同時にはできない。

結局、年収350万の会社員だった私が資産3,000万・配当月15万でサイドFIREし、2年後の今は資産5,000万・配当月27万で完全FIREしている。振り返ってわかったのは、サイドFIREは「いくら貯めるか」ではなく「どの順序で準備するか」で決まるということだった。

この記事では、私が実際に歩いた道筋を6つのフェーズに分けて書く。正解のロードマップではない。「年収350万・DINKs・40代」という条件の人間が、この順序で動いた記録だ。途中で55〜83万円の節税機会を逃した失敗も、そのまま書いている。

目次

FIREに必要な資金――「4%ルール」と、もうひとつの現実解

サイドFIREなら、完全FIREに必要な4,500万円を3,000万円まで縮められる。この差が、年収350万の私には決定的だった。

根拠になるのが「4%ルール」。1998年にトリニティ大学の研究者が発表した理論で、資産の4%を毎年取り崩しても、30年以上は資産が枯渇しない確率が高いという研究結果だ。

この理論をそのまま当てはめると、年間の生活費×25倍が必要資産額になる。月15万円で暮らすなら、年間180万×25=4,500万円。年収350万の会社員にとって、正直、遠い数字だった。

ただ、ここで「完全リタイア」と「サイドFIRE」を分けて考えると景色が変わる。

タイプ収入の構造必要資産の目安(月15万生活)
完全FIRE資産の取り崩し or 配当のみ4,500万円
サイドFIRE配当+労働収入2,500〜3,000万円

サイドFIREなら、月15万のうち半分を配当、残りをフリーランス収入で賄えばいい。配当で月7〜8万を作るために必要な元本は、利回り3〜4%で計算すると2,500〜3,000万。4,500万が一気に3,000万まで縮まる。

私が選んだのはサイドFIREだった。理由は単純で、4,500万を貯めるより3,000万を貯めるほうが数年早い。その「数年」は、40代の私にとって小さくなかった。

FIREの種類と考え方についてはこちらで整理している。

Phase 1:支出の「底」を知る――最初にやったのは投資ではなかった

サイドFIREを意識し始めたとき、最初にやったのは証券口座を開くことではなかった。

家計簿アプリを入れた。

当時、自分たちが月にいくら使っているか正確に把握していなかった。給与が入り、家賃が引き落とされ、クレジットカードの請求が来て、月末にはなんとなく残っている。「たぶん月20万くらいかな」という感覚だけで暮らしていた。

3ヶ月間すべての支出を記録した。出てきた数字は月17万円。思ったより少なかった。

ここから「これ以上は下げたくない」ラインを探る作業に入った。格安SIMに変えた。保険を見直した。サブスクを3つ解約した。ただし外食の頻度は減らさなかった。夫婦で食べに行く時間は「削ると生活の質が落ちる」ものだったから。

半年かけて落ち着いた数字が、月15万円。

費目月額
住居費(住宅ローン)約4万
食費約3万
光熱費約2〜5万(平均3万)
通信費約1万
その他(日用品・医療・交通)約2〜3万
合計約13〜16万(平均15万)

この「15万」が、その後のすべての計算の起点になった。支出を減らすのは我慢ではない。自分たちが満足に暮らせる金額を知ることで、ゴールの距離が一気に縮まる。投資のリターンを1%改善するより、支出の「底」を2万円下げるほうが、必要資産額に与えるインパクトは大きかった。

夫婦の月15万円の生活費内訳はこちらで公開している。

Phase 2:貯蓄率を最大化する――年収350万・貯蓄率45%・7年間

支出の底がわかれば、次は「毎月いくら投資に回せるか」が決まる。

私の場合、手取りは月約22万円。生活費15万を引くと、月7万。ボーナスの大半も投資に回していたから、年間で100〜120万。貯蓄率にすると約45%。

FIREの到達期間を決めるのは、年収ではなく貯蓄率だ。

年収貯蓄率年間投資額3,000万到達の目安
350万(手取り約265万)45%約120万約7年(配当再投資込み)
700万(手取り約520万)30%約155万約6年(配当再投資込み)

年収が倍でも、貯蓄率が低ければ到達期間はそこまで変わらない。年収700万で生活費が月30万なら貯蓄率は30%台。年収350万で生活費15万なら45%。差が縮まる。

ここが「低年収でもFIREできた」の核心だと思っている。入金力で勝てないなら、支出設計で勝負する。DINKsで生活費を分担していたからできたことで、1人暮らしだったら正直もっと時間がかかったはず。

30代半ばから本格的に投資を始め、約7年で資産3,000万に到達した。派手な話は何もない。地味な積み上げの7年間。

30代からFIREを目指す場合の必要資金については別記事で試算している。

Phase 3:資産を「収入を生む形」で持つ――高配当株を選んだ理由

貯蓄率45%で積み上げるとして、そのお金をどう持つか。選択肢は大きく3つあった。

方法メリットデメリット
インデックス投資(取り崩し型)長期リターンが高い毎月「減っていく」のが心理的にきつい
不動産投資安定したキャッシュフロー初期資金・管理の手間・流動性の低さ
高配当株配当が「今月いくら入ったか」見えるインデックスより長期リターンは劣る可能性

私が高配当株を選んだ理由は、正直に言えば「精神的な安心感」だった。インデックス投資の取り崩しは理論的に合理的だけど、FIRE後に毎月資産が減っていく画面を見て平気でいられる自信がなかった。配当なら元本を売らずに現金が入る。「今月は〇〇円入った」と確認できるのが、私の性格には合っていた。

ただし、最初の1年でつまずいた。

証券会社のサイトで配当利回りランキングを開いて、上から順に買っていった。5%、4.8%、4.5%。利回りが高いほうが少ない元手で目標に届く。単純な算数だ。

この「単純な算数」が、最初の失敗だった。

利回り5%超で買った銘柄が、3ヶ月後に業績下方修正、5ヶ月後に減配。利回り5%のはずが実質2.5%に。含み損まで抱えた。利回りが高い株には、高い理由がある。株価が下がって市場がその会社の将来を悲観しているから、利回りの数字だけが膨らんでいるケースだ。

2年ほど試行錯誤して、自分なりの判断基準ができた。

順番見る指標判断基準
1営業CF(5年推移)安定黒字で配当総額を上回る
2配当性向CF配当性向50%以下
3配当方針DOE基準 or 累進配当
4配当利回り最後に見る

利回りは「最後に見る数字」になった。この手順で選ぶと利回りは3〜4%台に落ち着く。5%超えはほとんど残らない。でも減配リスクが低いから持ち続けられる。持ち続けるから増配の恩恵を受けられる。3.5%で買った株が、5年後に取得価格ベースで5%を超える。そういう形になった。

利回りランキングで失敗した経験の詳細はこちら。高配当株をこれから買う人には先に読んでほしい。

新NISAで高配当株を買う戦略についても別記事で書いている。

Phase 4:退職の判断基準を決める――配当が15万に届いた日

「いくらになったら辞める」を数字で決めていなかったことが、退職判断で最大の問題だった。

配当が少しずつ積み上がっていく。月5万、8万、10万——証券口座の配当入金履歴を見るのが、年に4回の楽しみだった。

ただ、「いつ辞めるか」はずっと決められなかった。月12万、13万、14万。増えてはいるのに辞める決断にはならない。基準がないから、いつまでも「もうちょっと貯めてから」が消えない。

そこで3つの判断軸を作った。

判断軸1:配当≧生活費のラインに到達

配当+フリーランス収入で、月の生活費15万を超える状態が6ヶ月以上続くこと。配当が月15万に届いた月、この基準をクリアした。

判断軸2:フリーランスの仕事を退職前に確保

フリーランスの仕事は退職前から副業として小さく始めていた。月数万円程度。退職と同時に「収入ゼロ」にならない状態を作ってから辞めた。週3日で月の生活費の半分程度を稼げる見通しがあった。

判断軸3:退職後に困ることを事前に全て処理

クレジットカードの審査、住宅ローンの確認、保険の切り替え。会社員の肩書がなくなると面倒になることをリストアップして、退職前に全部済ませた。

3つの基準を満たした。——のだが、そこから2ヶ月、退職届を出せなかった。シミュレーション上は問題ない。配当は毎月入ってくる。でも「辞めたら戻れない」という恐怖は、数字では消せなかった。

最終的に背中を押したのは、配当の推移を並べたスプレッドシートだった。右肩上がりのグラフ。1年ごとに配当が増えている。この傾きが続くなら、辞めた後も配当は増え続ける。そう思えたとき、ようやく踏み切れた。

配当と資産の推移はこちらで全て公開している。

Phase 4.5:退職前の税金で55〜83万円を失った

Phase 4で「辞めても大丈夫」の基準を作ったと書いた。基準は間違っていなかった。ただ、基準の中に「税金と社会保険」が入っていなかった。

退職してフリーランスになった瞬間、税金が「見える」ようになる。会社員時代は天引きされるだけで、税金は給与明細の数字でしかなかった。フリーランスになると全部自分で計算して、自分で払う。

はじめての確定申告で明細を見て思った。高くないか、と。

最大の後悔は2つある。

失敗1:iDeCoの掛金を2年間放置した

iDeCoは会社員時代からやっていた。月2万3,000円。フリーランスになると上限が月6万8,000円に変わる。年間81万6,000円。会社員時代の約3倍だ。

この事実は辞めた直後から知っていた。加入者区分の変更手続きをしたとき、書類に上限額が書いてあった。見た。読んだ。理解した。

——で、2年間、月2万3,000円のまま放置した。

理由は「めんどくさかった」が一番大きい。もう一つは、フリーランスになりたてで収入の見通しが立たず、手元の現金を減らすことに抵抗感があった。株を買うときは数十万円を躊躇なく動かすのに、iDeCoの掛金を月4万5,000円増やす決断ができない。株は「増える可能性」にお金を出す行為で気分がいい。iDeCoの増額は「将来の税金を減らす」行為で、目の前では何も起きない。心理的なハードルがまったく違った。

失敗2:小規模企業共済を知らなかった

iDeCoが「見えていたのに動けなかった」なら、小規模企業共済は「見えてすらいなかった」。

フリーランスや小規模事業者のための退職金制度。掛金は月1,000円〜7万円で、全額所得控除。年間最大84万円。

この制度を知ったのはフリーランス3年目の春。税理士に「節税対策は?」と聞かれ、「iDeCoはやっています」と答えたら、「小規模企業共済は?」と返された。「何ですかそれ」と言った。3年目だ。2年間、この制度を知らずに過ごしていた。

逃した金額の計算

制度年間控除額2年分の逃した控除
iDeCo増額分54万108万
小規模企業共済84万168万
合計138万276万

所得税率10%+住民税10%で計算しても、2年間の節税損失は約55万円。国民健康保険料の減額まで入れると83万円に達する可能性がある。軽自動車が買える額だ。

退職前に「フリーランスの税金と控除」を調べる時間を取らなかったことが、サイドFIRE後の最大の金銭的損失だった。配当額や資産額のシミュレーションはあれだけ精密にやったのに、税金の話は完全に盲点になっていた。

退職前にもう一つ調べておくべきだったのが健康保険。退職後の選択肢は「任意継続」「国保」「配偶者の扶養」の3つ。どれが得かは年収や家族構成で変わるのに、辞めてから慌てて調べた。

iDeCoと小規模企業共済の失敗談は別記事で詳しく書いている。退職前の方には必ず読んでほしい。

FIRE前の税金チェックリストもまとめた。

退職後の健康保険の選び方についてはこちら。

Phase 5:FIRE後の2年――資産3,000万→5,000万に増えた構造

サイドFIREして2年。資産は3,000万から5,000万に増えた。配当は月15万から27万に。数字だけ見れば順調だ。

ただ、これは投資がうまかったからではない。構造的な理由が3つある。

なぜ資産が増えたのか(3つの構造的理由)

①フリーランス収入の全額を投資に回した。サイドFIRE後の生活費は配当でほぼ賄える。フリーランスで稼いだ分は生活に使わず、そのまま証券口座へ。会社員時代は「手取りから生活費を引いた残り」しか投資できなかったが、この構造が逆転した。

②配当の増加分も再投資した。生活費は月15万で変わっていない。配当が15万→20万→25万と増えても、増えた分は再投資。生活水準を上げなかったことで、配当が配当を生む循環ができた。

③節税で浮いた分が投資余力になった。iDeCoの掛金増額と小規模企業共済をフル活用し、年間の税負担を大幅に圧縮。浮いた分をそのまま投資に回した(2年間放置した後の話だけど)。

低年収だからこそ使えた制度

年収350万——入金力では年収700万の人に勝てない。でも「制度のフル活用」は年収に関係なく使える。むしろ低年収のほうが控除の恩恵が大きいケースもある。

制度年間の枠私の活用状況
iDeCo81.6万(フリーランス上限)満額拠出(3年目以降)
小規模企業共済84万月7万で満額(3年目以降)
新NISA年間360万(成長投資枠+つみたて枠)成長投資枠で高配当株を購入
ふるさと納税所得による年間の食費の一部を実質カバー

特にiDeCoと小規模企業共済の合計で年間165.6万円の所得控除。所得税+住民税の20%分で年間約33万円の節税。この33万円が翌年の投資原資になる。

入金力で勝てないなら、支出設計・制度活用・タイミングの3つで戦う。これが低年収なりの戦略だった。

Phase 6:完全FIREへの移行――2年経ってわかったこと

サイドFIRE(週3日フリーランス)を2年続けた後、完全FIRE(労働なし)に移行した。資産5,000万・配当月27万。生活費を配当だけで賄える状態になった。

最大の収穫:時間のコントロール権

会社員時代、月曜の朝に目覚ましが鳴る音が嫌だった。嫌なのは仕事そのものではなく、時間を自分で決められないことだった。

サイドFIRE期間中は「自分で決めたリズム」で働けた。忙しい週は4日働く。体調が悪い週は2日にする。この調整が自分の裁量でできること自体が、会社員時代にはなかった自由だった。

完全FIREに移行した今、時間は完全に自分のものになった。ただし、その自由にはコストもある。

最大の想定外:社会との接点が減る

会社員時代は、同僚との雑談、昼食、飲み会——望んでいなくても人と接する場面があった。フリーランスになって、それが激減した。完全FIREでさらに減った。

最初の1年は気にならなかった。2年目あたりから、ふとした瞬間に「今日、誰とも話していないな」と気づく日が増えた。

暇ではない。ブログを書き、投資の勉強をし、散歩をし、本を読む。時間は埋まっている。でも「暇」の正体は時間の問題ではなく、「今日やったことに意味があったか」と自問したときに答えに詰まること。会社員時代は「仕事をした」が意味の代替品になっていた。それがなくなると、自分で意味を作る必要がある。

現在の1週間のスケジュール

曜日過ごし方
ブログ執筆、投資銘柄の確認
散歩、読書、趣味の時間
ブログ執筆、家事
妻と外出、買い物
投資情報の収集、ブログ更新
土日夫婦でゆっくり過ごす

週5で働いていた頃と比べて「何もしない日」が増えたわけではない。むしろ「自分で選んだ予定」で埋まっている。ただ、予定を自分で選ぶこと自体にエネルギーが必要で、会社員時代には不要だったコストだ。

完全FIREして良かったか。答えはYes。ただし「もっと早く準備すればよかった」という種類の後悔がある。Phase 4.5で書いた55〜83万円の損失は、まさにそれだ。

まとめ

年収350万・DINKs・40代。この条件で資産3,000万を作り、サイドFIREし、2年後に完全FIREに移行した。入金力で勝てない分、支出設計・貯蓄率・制度活用の3つで時間を味方にした結果だ。途中でiDeCoの放置と小規模企業共済の見落としで55〜83万円を失った失敗も含めて、これが私のロードマップの全体像になる。

「辞める日」を決めるより、「辞めても大丈夫な状態」を作るほうが、ずっと大事だった。

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