サイドFIREして、もう6年になる。2020年5月、コロナ禍のさなかに決断した。
週3日のアルバイトと配当金で生活する日々。会社員時代に思い描いていた「自由な暮らし」は、たしかに手に入った。でも6年経った今、正直に言えば「思っていたのと違う」部分もそれなりにある。
ネットで「FIRE 後悔」「サイドFIRE やめた」と検索している人は多い。実際に私も、FIREを決断する前は不安で何度も検索した側の人間だ。だから今度は、6年間やってみた側として書いてみたいと思う。
良かったことも、想定外だったことも、後悔していることも、できるだけそのまま書く。これからFIREを検討している人にとって、判断材料のひとつになれば幸いだ。
サイドFIREして良かったこと3つ
1. 「時間の主導権」を取り戻せた
サイドFIREして一番大きかったのは、時間の使い方を自分で決められるようになったことだ。
会社員時代は、朝の通勤電車から始まって、会議、残業、帰宅後の疲労。「自分の時間」と呼べるのは寝る前の1〜2時間くらいだった。それすら疲れて何もできない日が多かった。
今は違う。朝、目覚ましなしで起きる。天気がよければ散歩に出る。平日の昼間にスーパーに行けば空いているし、病院も待ち時間が短い。こういう「小さな自由」の積み重ねが、生活の満足度を大きく変えた気がする。
総務省の「社会生活基本調査(令和3年)」によると、日本人の平日の自由時間は平均で約3〜4時間程度とされている。フルタイムで働いていた頃の私は、おそらくそれ以下だった。今は自由時間が圧倒的に増えて、「時間に追われる」という感覚がほぼなくなった。
ただ、ここで正直に書くと、最初の半年くらいは「自由すぎて逆に不安」という感覚があった。何をしてもいい時間があるのに、何をすればいいかわからない。あの感覚は、実際に経験しないとわからないと思う。
2. 人間関係を「選べる」ようになった
会社員時代は、上司も同僚も取引先も、基本的に選べない。苦手な人とも毎日顔を合わせなければならないし、飲み会も断りにくい空気がある。
サイドFIREしてからは、付き合う人を自分で決められるようになった。週3日のバイト先にも人間関係はあるけれど、フルタイムの会社員とは密度が全然違う。嫌なら辞めればいいという選択肢があること自体が、精神的な余裕につながっている。
妻との関係も変わった。共働きのDINKsだから、以前はお互い仕事で疲れて、平日はほとんど会話がない日もあった。今は私の方に時間の余裕があるので、家事の分担も自然に変わったし、一緒に過ごす時間が増えた。これは想像以上に大きな変化だった。
3. 健康への意識が変わった
会社員の頃は、健康を「消耗するもの」だと思っていた。忙しいからコンビニ弁当、疲れているから運動しない、ストレスで夜更かし。健康診断の数値が悪くても「まあ、仕方ないか」で済ませていた。
サイドFIREしてからは、自炊する時間があるし、日中に散歩や軽い運動ができる。睡眠時間も安定した。特に意識して「健康的な生活をしよう」と決めたわけではなく、時間に余裕ができたら自然とそうなった。
資産を取り崩す生活では、医療費は大きなリスクだ。だからこそ、予防に時間をかけられるサイドFIRE生活は、長期的に見ても合理的だと感じている。
想定外だったこと3つ
1. 社会との「接点」が急に減る孤独感
これは本当に想定外だった。
会社を辞めると、「社会とのつながり」が一気に薄くなる。毎日顔を合わせていた同僚、定期的に会っていた取引先、そういった関係がほぼゼロになる。
週3日バイトしているから完全な孤立ではないけれど、バイト先での関係は会社員時代の同僚関係とは質が違う。深い話をする相手が減った、というのが正確な表現かもしれない。
平日の昼間に一人でカフェにいると、周りはリモートワーカーか高齢者ばかり。同年代で同じような生活をしている人はほとんどいない。「自分は社会から外れてしまったのではないか」という漠然とした不安は、FIRE後1年くらい断続的に感じていた。
今はSNSやオンラインコミュニティで同じ境遇の人とつながっているから、だいぶ楽になった。でもFIREする前に「孤独対策」をもっと考えておくべきだったと思う。
2. 「お金の不安」は消えない
3,000万の資産があっても、配当金と週3バイトの収入で生活していると、お金の不安は消えない。会社員時代のように毎月決まった給料が入ってくる安心感は、もうない。
特に株式市場が大きく下落した時期は、資産の評価額が目に見えて減っていくのを見て、かなり精神的にきつかった。頭では「長期投資だから一時的な下落は気にしなくていい」とわかっていても、実際に自分の生活費の基盤が揺らいでいるように感じると、冷静ではいられない。
対策として、生活防衛資金(現金)は1年分以上を確保するようにしている。これがないと、相場が荒れた時に狼狽売りしてしまうリスクがある。配当金を生活の柱にしているとはいえ、現金クッションの存在は想像以上に重要だ。
3. 「自己管理」の難しさは会社員時代の比ではない
会社員時代は、始業時間があるから朝起きる。締め切りがあるから仕事をする。評価があるから頑張る。要するに、外部の強制力で動いていた部分がかなり大きい。
サイドFIREするとその強制力がなくなるから、すべて自分で律する必要がある。最初のうちは「自由だ、最高」と思っていたけれど、半年もすると生活リズムが崩れ始めた。昼夜逆転しかけたこともある。
週3日のバイトがあるからまだマシだが、もし完全FIREだったらもっと崩れていたと思う。「サイド」であることの恩恵は、収入面だけでなく、生活リズムの維持という意味でも大きい。
今は自分なりのルーティンを作って安定しているけれど、ここに至るまで1年以上かかった。FIREのための資産計画はみんな入念にやるのに、「FIRE後の生活設計」をちゃんと考えている人は少ない気がする。
後悔していること
FIRE前に「会社の外の居場所」を作っておくべきだった
6年経って一番後悔しているのは、会社を辞める前に社外のコミュニティや人間関係をもっと作っておかなかったことだ。
会社員時代は、仕事が忙しくて社外活動に時間を割く余裕がなかった——と当時は思っていた。でも今振り返ると、「余裕がなかった」のではなく「優先順位を上げていなかった」だけだ。
FIRE後に一から人間関係を作るのは、思っている以上にエネルギーがいる。会社という「所属」がなくなると、自己紹介のたびに「今何をしている人なのか」を説明する必要がある。「週3でバイトしながら配当金で生活しています」は、なかなか理解されにくい。
もしこれからFIREを目指す人がいるなら、資産形成と並行して「辞めた後の居場所」を少しずつ作っておくことを強く勧める。趣味のコミュニティでも、副業のつながりでも、何でもいい。「お金が貯まったから辞める」だけでは、生活の半分しか準備できていない。
社会保険の知識が足りなかった
もうひとつの後悔は、社会保険、特に国民健康保険や年金の仕組みをFIRE前にもっと勉強しておくべきだったということだ。
会社員時代は社会保険料が給与から天引きされていたから、自分でいくら払っているかすらよくわかっていなかった。退職後に国民健康保険の保険料を自分で計算してみて、初めてその金額に驚いた。配当収入や前年の所得によって保険料が大きく変わるという仕組みも、退職してから知った。
事前にシミュレーションしていれば、退職のタイミングや、任意継続被保険者制度を使うかどうかの判断がもっとスムーズだったと思う。
それでもサイドFIREを続ける理由
ここまで書くと「やっぱりFIREしない方がいいのでは」と感じる人もいるかもしれない。
でも私の結論は「完璧ではないけれど、トータルで見れば良い選択だった」だ。
孤独感はある。お金の不安もある。自己管理は大変だ。でも、会社員時代に感じていた「人生がコントロールできない」という感覚に比べれば、今の悩みはすべて「自分で対処できる範囲の悩み」だ。
会社員時代の悩みは、上司の方針、組織の都合、業界の景気など、自分ではどうしようもないことばかりだった。今の悩みは、自分の工夫で解決できるものが多い。その違いは大きい。
年収350万で3,000万の資産を作るのは簡単ではなかったし、時間もかかった。でもその過程で身につけた「少ないお金でも満足できる生活力」は、サイドFIRE後の生活を支える大きな土台になっている。
派手な暮らしはできない。旅行も年に数回。外食も控えめ。でも、毎朝「今日は何をしようか」と自分で決められる生活には、お金では測れない価値があると感じている。
FIRE検討中の人へ — 判断のためのチェックポイント
私の6年間の経験から、FIREを検討している人に伝えたいことを整理してみる。
「完全FIRE」よりも「サイドFIRE」から始める方がリスクが小さい。
完全に収入を断つのではなく、週に数日でも働くことで、収入の安定だけでなく、社会とのつながりや生活リズムの維持にもなる。私自身、「サイド」の部分に何度も救われてきた。
FIRE後に必要なのは「お金」だけではない。
資産計画はもちろん重要だ。でも「辞めた後に何をするか」「誰とつながるか」「どうやって生活リズムを作るか」も同じくらい重要だと、6年やってみて実感している。
「後悔するかもしれない」と思って踏み出せないなら。
後悔は、たぶんする。私もした。でもそれは「やらなければよかった」という後悔ではなく、「もっとこうしておけばよかった」という後悔だ。この違いは大きい。前に進んだからこそ見える後悔は、次の改善につながる。
FIREは「ゴール」ではなく「スタート」だ。走り始めてから調整すればいい。ただし、走り出す前の準備が多いほど、最初の半年が楽になるのは間違いない。

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