サイドFIREして後悔していないか。
6年前に会社を辞めたとき、資産は3,000万円、配当は月16万円でした。年収350万の会社員が「これで足りるのか」と不安なまま踏み出しました。
結論から言うと、後悔はあります。ただし、ネットで見かける「サイドFIREして後悔する理由5選」のような話とはだいぶ違います。もっと地味で、もっと具体的な後悔です。
6年経った今、資産は5,000万円になり、配当は月27万円まで増えました。週3日のフリーランスとして働いています。数字だけ見れば順調に見えるかもしれません。でも、その6年間で「もっと早く知っていれば」と何度思ったかわかりません。
サイドFIREして6年、正直に言う「後悔」
サイドFIREの後悔と聞くと、「お金が足りなくなった」「暇すぎて病んだ」みたいな話を想像するかもしれません。
私の場合は違いました。一番の後悔は税金と社会保障制度の知識がなさすぎたことです。
会社員時代は、税金も社会保険も給料から勝手に引かれていました。確定申告なんてしたことがなかったし、する必要もありませんでした。だから、フリーランスになったとき何が起きるか、まったく想像できていませんでした。
「フリーランスの節税についてもっと勉強しておくべきだった」——これは今でも強く思います。
会社を辞めた翌年の住民税と国民健康保険料の請求が想像以上でした。住民税は前年の所得に基づいて計算されるから、退職して収入が大幅に下がっても、しばらくは会社員時代の所得で計算された金額を払い続けることになります。
国民健康保険も同じ仕組みです。私の場合、退職翌年の保険料は年間で約50万円近くになりました。配当月16万円の生活で、毎月4万円以上が保険料に消えていく。これは正直きつかったです。
もう一つ、後悔しているのがiDeCoと小規模企業共済を知るのが遅れたことです。
「iDeCoもそうだし、小規模企業共済をもっと早く知りたかった」
iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金が全額所得控除になります。フリーランスなら月額6万8,000円まで拠出できて、年間で約81万6,000円が所得から控除されます。
小規模企業共済も同様で、月額7万円、年間84万円まで全額所得控除です。この二つを初年度からフルに使っていれば、所得税・住民税・国民健康保険料を合わせて、年間で数十万円は違っていたと思います。
私がこれらの制度をちゃんと使い始めたのは、サイドFIREして3年目でした。最初の2年間、制度を知らないまま余計に払っていた税金を思うと、本当にもったいないです。

会社員のうちに、退職後の税金・社会保険・節税制度について一通り調べておくだけで、この後悔は防げました。サイドFIRE前の「お金の準備」というと資産額の話ばかりになりがちですが、制度の知識こそが資産を守るという実感があります。
「フリーランスは一瞬でただの無職になる」という現実
これは自分自身に言い聞かせている言葉でもあります。
「フリーランスは一瞬でただの無職になるよ」
サイドFIREの「サイド」の部分、つまりフリーランス収入は、会社員の給料とはまったく性質が違います。来月も同じ仕事があるかどうかは保証されません。クライアントの都合で突然契約が終わることもありますし、体調を崩せば収入はゼロになります。
私は週3日、前職のマーケティング経験を活かした仕事をしています。ありがたいことに、今は継続的に依頼をいただけています。でも、それが来年も続くかは誰にもわかりません。
この不安は、サイドFIREして6年経った今でもあります。
ただ、会社員時代の不安とは種類が違います。会社員のときは「この会社にいて大丈夫か」「リストラされないか」という不安でした。フリーランスの不安は「自分のスキルに市場価値があるか」に直結しています。ごまかしが効かない分、不安の質が違います。
この不安との付き合い方は、二つあります。
一つは、配当収入という「底」があること。月27万円の配当があるから、フリーランスの収入がゼロになっても、すぐに生活が破綻するわけではありません。DINKs(子なし夫婦)の私たちの場合、総務省の家計調査によると二人以上世帯の平均消費支出は月約29万円ですが、住居費がかからない持ち家であれば配当だけでかなりの部分をカバーできます。
もう一つは、スキルの賞味期限を意識すること。マーケティングの世界は変化が速く、3年前のノウハウが今は通用しないことも多いです。だから、フリーランスの仕事は「お金を稼ぐ手段」であると同時に「スキルを更新する場」でもあると思っています。
「フリーランスは一瞬で無職になる」は事実です。でも、配当という安全網があるからこそ、その不安と共存できています。配当収入なしのフリーランスだったら、私はとっくにメンタルをやられていたかもしれません。
周囲の反応は、思ったほど冷たくなかった
サイドFIREを考えている人が口にしない不安の一つに、「周りにどう思われるか」があります。
「会社辞めて何してるの?」「フリーターみたいなもんでしょ?」——そういう反応をされるんじゃないかと、辞める前は気にしていました。
実際どうだったかというと、「今は在宅の仕事も増えているので、周りからの悪い反応はほぼない」。
これは正直、時代に助けられた面が大きいです。コロナ以降、リモートワークやフリーランスの働き方が一気に広まりました。「在宅で仕事してる」と言えば、それ以上突っ込まれることはほとんどありません。
6年前、辞めた直後はさすがに親には心配されました。でも、配当収入があること、フリーランスで仕事もしていることを説明したら、それ以降は何も言われなくなりました。

ただ、これはDINKsだから言えることかもしれません。子どもがいれば、周囲の反応も自分自身のプレッシャーも違ったと思います。「子どもがいるのに会社辞めて大丈夫?」というのは、「子どもがいないのに辞めて大丈夫?」とは重みが違います。
自分の場合について言えば、周囲の反応を心配してサイドFIREを躊躇するのは、杞憂に終わる可能性が高いです。少なくとも2020年代の日本では。
資産3,000万→5,000万。6年間で変わったこと、変わらなかったこと
後悔の話ばかりしてきたので、ここからは6年間の「結果」について書きます。
サイドFIREしたときの資産は約3,000万円。配当は月16万円でした。6年後の今、資産は約5,000万円、配当は月27万円になっています。

この増え方を見て「順調じゃないか」と思うかもしれません。確かに数字は増えました。でも、それは「配当を再投資し続けた」「フリーランスの収入から余った分も投資に回した」「2020年代前半の株式市場が好調だった」という三つの要因が重なった結果であって、計画通りに増やしたわけではありません。
特に株式市場の好調は、自分の実力ではありません。次の6年が同じようにいく保証はどこにもありません。
一方で、6年間を通して変わらなかったこともあります。
生活費はほとんど変わっていません。資産が増えても、生活水準を上げませんでした。これは意識してそうしたというより、上げる必要を感じませんでした。通勤がなくなって服を買わなくなったし、ランチ代もかかりません。見栄のための消費がごっそりなくなると、生活費はむしろ下がりました。
もう一つ変わらなかったのは、将来への漠然とした不安です。資産が3,000万でも5,000万でも、「このままで大丈夫か」という感覚は消えません。会社員時代とは不安の中身が違うだけで、不安そのものはなくなりません。
これは期待していたのと違いました。「サイドFIREすれば不安から解放される」と思っていたわけではありませんが、もう少し楽になると思っていました。
ただ、不安の「質」は確実に変わりました。会社員時代は「自分の人生をコントロールできない」不安でした。今は「自分で選んだ結果への責任」という不安です。後者のほうが、私にはずっとましです。
金融庁のNISA特設サイトでは長期・積立・分散の資産形成が推奨されていますが、制度を活用して資産を「増やす」ことと、その資産で「生きていく実感」はまったく別物でした。
サイドFIREの後悔を減らすために、辞める前にやれること
6年前の自分に言うなら、こうです。
退職後の税金・社会保険のシミュレーションを、辞める前にやる。
これが一番大きいです。住民税、国民健康保険、国民年金。会社を辞めたら何がいくらかかるのか、具体的な金額を把握しておく。特に退職翌年の住民税は、会社員時代の収入ベースで計算されるから、想像以上の金額になることがあります。
iDeCo・小規模企業共済・新NISAの活用計画を、辞める前に立てる。
「フリーランスの節税についてもっと勉強しておくべきだった」——これを繰り返しますが、本当にそう思っています。制度を知っているか知らないかで、年間数十万円の差が出ます。これは投資のリターンを何パーセント上げるかという話より、はるかに確実に効きます。
配当収入の「底」を、いくらに設定するか決める。
サイドFIREの安心感は、配当収入が生活費のどれだけをカバーしているかで決まります。私の場合、月16万の配当でスタートして、当時の生活費の約6割でした。今振り返ると、この水準でも何とかなりましたが、できれば生活費の8割をカバーできる配当があると精神的にかなり楽だと思います。
フリーランスの仕事を、辞める前に1件でも確保しておく。
「フリーランスは一瞬でただの無職になる」。これは裏を返せば、仕事がある状態で辞めることの重要性を意味しています。退職してからゼロで仕事を探すのと、すでに1件の実績がある状態で広げていくのとでは、精神的な余裕がまるで違います。
サイドFIREの後悔は、「辞めたこと」そのものへの後悔ではありませんでした。「もっと準備できたのに、しなかった」という後悔です。
そして6年経って思うのは、後悔があっても、それでも会社員に戻りたいとは一度も思わなかったということです。後悔と、選択の正しさは、別の話でした。
サイドFIREを迷っているなら、一つだけ。後悔をゼロにすることはできません。でも、後悔の「量」は準備で減らせます。
今のうちにできることを、一つずつ潰しておく。それだけで、踏み出した後の景色はだいぶ変わるはずです。

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