FIREの失敗3つ|2年目の本音と、それでも後悔しなかった理由

2年前、資産3,000万円と配当月15万円で、40代で会社を辞めました。年収350万円の上場企業マーケ部、子なし夫婦、妻は会社員。この条件で、辞めたんですよ。当時の私は、不安の塊みたいな顔をして最終出社の日を迎えて、帰り道に一度だけ振り返ったのを覚えています。

「後悔してませんか?」と、よく聞かれるんですよね。してます。3つだけ。どっちもお金の話じゃなくて、辞める前の私が1ミリも想像していなかった種類の後悔なんです。

目次

辞めるのが、2年遅れた

先に事実だけ書かせてください。私は本当は辞められるタイミングから2年遅れて辞めました。3,000万円と月15万円の配当は、2年前にもう揃っていたんですよ。揃っていたのに、あの頃の私は「あと1年」と言って、1年経って、また「あと1年」と言って、それで2年です。

その2年で何が起きたかというと、資産はちょっと増えて、疲労もちょっと増えて、相殺して、差し引きほぼゼロでした。ゼロじゃない、マイナスだ。時間を2年、丸ごと会社のデスクで失くしたんだからね

FIRE2年目 後悔vs良かったこと

後悔1: 会社の「面倒な時間」は、社会との細い糸だった

会社員時代、ランチも雑談も飲み会も、正直ぜんぶ面倒で、早く帰らせてくれとずっと思っていました。辞めて半年くらい経った頃に、ようやく気づいたんですよね。あれ、糸だったんだ、って。

平日の昼間に家に一人でいる時間って、想像の10倍くらい長いんですよ。誰とも喋らない日が普通にあって、妻が帰ってくるまで声を一度も出していない日があって、自分の声の出し方を忘れそうになる日すらあったんです。最初の3ヶ月は最高に静かで最高に快適でした。4ヶ月目くらいから、その静かさが、じわじわ重くなっていったんですよね。

孤独って、時間の長さの問題じゃなかった。「気にかけてくれる存在が何人いるか」の問題だったんですよ。会社員時代の私は、面倒だと思っていた同僚の数だけ気にかけられていて、気にかけられていることに気づかないまま、それを面倒がっていたわけです。いま書いていても、ちょっと情けなくなる話なんですけどね。

対策として、週2日のフリーランスを始めました。打ち合わせで人と話して、メールの返事が来て、締切に追われる、あの嫌だったはずの「誰かに急かされる感覚」が戻ってきた瞬間、私はちょっと嬉しかったんですよ。人間って社会的な生き物なんだなと、40代になって、家の居間で、ようやく実感した話です。

後悔2: 通勤は、運動だった

会社員時代、通勤だけで1日約6,000歩ありました。駅まで歩いて、階段を上って、オフィスの中を動き回って、それがぜんぶ運動だったんですよ。座り仕事だと思い込んでいた自分の1日は、下半身にとってはそこそこの運動量を持っていた。辞めてから初めて、それを知りました。

FIRE後、1日2,000歩を切る日が出てきました。家から出ない日があって、食材はまとめ買い、郵便はポストまで、終わり。

半年で体重が3キロ増えて、階段で息が切れるようになりました。40代で一回なまると、戻すのが本当にしんどいんですよ。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」によると、成人は1日約8,000歩相当が推奨されていて、通勤だけでほぼクリアしていた数字を、私は辞めてから初めて知ったんです。

FIRE後の体って、通勤という「勝手にやってくれる運動」を失った瞬間にデフォルト値が書き換わるんですよ。辞めたその日から、運動のベースラインが自動でマイナスに切り替わって、何もしないこと自体が下り坂になる。ここが落とし穴でした。対策としてジムに週2回と1日30分の散歩を入れて、半年かけて体重は戻したんですけど、会社員時代の私が先に運動習慣を作っておけば、ゼロから立て直す必要はなかったんですよね。

後悔3: 社会保険の仕組みを、辞めてから知った

会社員時代、給与明細の「控除」の欄をまともに読んだことがなかったんですよ。健康保険料も厚生年金も、天引きされていたから「まあそういうもんだろう」で済ませていました。自分がいくら払っているのかすら、正確には知らなかった。

退職して国民健康保険に切り替えたとき、初めて金額を見て声が出ました。前年の所得で保険料がこんなに変わるのか、と。配当収入が保険料の計算に入ってくることも、辞めてから知ったんですよ。任意継続被保険者という選択肢があることすら、退職届を出した後に調べました。順番が完全に逆なんですよね。

辞める前に任意継続と国保と扶養の比較くらいは、シミュレーションしておくべきだった。退職のタイミングで税金と保険料を最適化できたはずなんです。私はそれをしなかったから、最初の1年は必要以上に払っていた可能性がある。退職前の節税チェックリストを先に読んでいれば、と今でも思います。計算し直す気力もなかったんですけどね、当時は。

後悔しなかった1: 目覚ましをかけない朝は、2年経っても飽きない

平日の昼にスーパーに行くと、空いてるんですよ。平日の昼に病院に行くと、待ち時間が短いんですよ。平日の昼に散歩に出ると、すれ違う人が少ないんですよ。こう書くと地味なんですけど、これが会社員時代には絶対にできなかったことなんです。

この「時間の自由」は、2年経った今もまったく飽きていません。慣れるだろうと思っていたんですけど、慣れませんでした。目覚ましをかけない朝に自然に目が覚める瞬間、いまだに「あ、今日も自由だ」と思うんですよ。2年経っても、です。

後悔しなかった2: 月曜が、怖くなくなった

会社員時代の日曜の夜、お腹の奥に重いものが落ちてくる、あの感覚。「明日、月曜か」と思うと、食欲もテレビの音量も一段下がる、あの感覚です。辞めたら、あれが消えました。上司の顔色を読まなくていいし、理不尽な会議に座らなくていいし、満員電車に押し込まれなくていいんですよね。

ここが大事なんですけど、ストレスはゼロにはなっていません。投資の含み損はキツいし、フリーランスの納期は胃が痛い。でも、種類が変わったんですよ。上司の機嫌は動かせないけど、納期は自分で動かせる。含み損はしんどいけど、銘柄は自分で選んだ。自分でコントロールできる範囲のストレスに変わった、ということなんです。

慢性的な肩こりと頭痛が、辞めて半年で消えました。病院にも行かず、薬も飲まず、ただ消えたんですよ。あの頭痛、ストレスだったんだな、と、無くなってから分かるやつです。

後悔しなかった3: 妻との夕食が、2年分増えた

うちはDINKsで、子どもはいません。私にとっての家族は妻一人だからね。会社員時代の帰宅は21時過ぎで、妻もその頃まで働いていて、平日にゆっくり話す時間はほぼゼロでした。休日にまとめて喋る、みたいな感じだったんですよ。

今は、妻が帰ってくる時間に夕食を準備して待っています。毎日です。先日、妻に「あなたが家にいてくれるおかげで、家のことが回ってる」と言われたんですけど、これは年収350万円時代の私には一生言われなかったセリフなんですよね。あの頃の私は、妻に「ごめん、今日も遅くなる」とLINEを打つ係だったんだから。

後悔しなかったことを振り返ると、行き当たりばったりではなく、計画的に準備して辞めたからこそ、こうして冷静に損得を数えられているという気もします。私が実際に歩いた準備の道筋は「FIREまでの5フェーズロードマップ」にまとめました。

肩書きは、思っていたより軽かった

FIRE後に地味にキツかったのが、「お仕事は?」と聞かれる場面です。会社員のときは「○○で○○をやっています」で30秒で終わっていたんですよね。便利な道具だったんですよ、肩書きって。

辞めたら、それが消える。「フリーランスです」と答えると、「何の?」と返ってくる。そこで微妙な間が生まれるんですよね。正直に言えば、最初の1年はこの質問が苦手でした。初対面の場が来るたびに「あ、また聞かれるな」と身構える。情けないですけど、名刺1枚分の安心感がこんなに大きかったのか、と辞めてから気づいたんですよ。

2年目まで、正直しんどかった。居心地が悪い。でも3年目に差しかかったあたりで、ふと気づいたんですよね。気にしているのは、自分だけだった。相手は5分後にはもう別の話をしてるんですよ。こっちが汗かいて「フリーランスで……えっと……」とモゴモゴしている間も、相手はたぶん「今日の夕飯なにかな」くらいのことを考えている。肩書きがなくて困ったことは、実は一度もなかったんです。困っていたのは、自分の頭の中だけ。

今は「フリーランスです」の一言で終わらせています。それ以上聞かれたら「投資とか、ちょっとしたライターとか」で流す。肩書きは、思っていたより軽かった。重かったのは、自分がそこにぶら下げていたプライドのほうです。

2年で、資産は3,000万から5,000万になった

数字の話を少しだけ。FIRE後、資産は取り崩すどころか増え続けました。3,000万円は約5,000万円になり、配当は月15万円から月27万円になったんですよ。内訳は、配当の再投資、週2日のフリーランス収入の余剰、そして市場の成長です。高配当株中心で、増配銘柄を選んで握ってきた結果ですね。

週2日のフリーランスで生活費の一部をまかないつつ、余剰は投資に回す。この回し方が、結果的に資産を増やしてくれました。「FIREしたら取り崩していくだけ」という世間のイメージは、私の場合は当てはまらなかったということなんです。詳しい推移は配当金と資産の全記録に書きました。制度面では金融庁のNISA特設ウェブサイト「資産形成の基本」が入り口として分かりやすくて、私が辞めた当時より今の新NISAは制度としてかなり強くなっていますね。

※個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

2年前の自分に伝えたい、ひとつのこと

ここだけは、少し声を大きくして書かせてください。2年前の、会議室で「あと1年」とつぶやいていた自分に、どうしても言っておきたいことがあるんですよ。

3,000万円と月15万円の配当が揃ったあの時点で、あなたはもう辞められたんです。揃っていました。数字は全部、机の上に並んでいたんですよ。なのに、あなたは「あと1年」と言って、その1年が経って、同じ言葉をもう一度口にしました。2回です。それで、2年。あの2年の平日の朝、あなたが何をしていたか覚えてますかと聞かれたら、たぶん覚えてないですよね。覚えてないんですよ。覚えていないほどに、同じ朝が2年分ただ繰り返されて、目覚ましに起こされて、駅まで歩いて、満員電車に押し込まれて、会議室に座って、上司の顔色を読んで、帰ってきたら妻はもう寝ていて、風呂に入って、寝る、その同じ1日が2年分ただコピー&ペーストで積み上がっただけで、そこには本当に、本当に、本当に何もなかったんですよ。資産のグラフだけが、ちょっと右に伸びた。あなたの体は、ちょっと重くなった。あなたの肩と頭は、ちょっと痛くなった。それだけです。

過去の自分を雑魚扱いしたくはないんですけどね、でも、あの時の私は本当に頭が悪かった。数字は読めるくせに、数字が示していたゴーサインが読めなかったんですよ。「3,000万円と月15万円」の意味が、本当は分かっていなかったんです。分かっていたら、辞めていたはずだからね。あの2年は、妻と夕食を食べられた2年でもあって、目覚ましをかけなくてよかった2年でもあって、日曜の夜を怖がらずに済んだ2年でもあったんです。ぜんぶ、会社のデスクで失くしたんですよ。

お金は、貯められます。増やせます。現に、辞めてからの2年で2,000万円増えたんですよ。でも、時間は、買い戻せない。もしこの記事を今まさに「あと1年」と言っている人が読んでいるなら、その1年で増える資産と、失う時間を、紙に書いて並べてみてほしいんです。私は書かなかったから2年失くしました。だからあなたは、書いてほしい。

もう遅らせるな。辞めろ。

完璧な準備より、小さく始めろ

もうひとつだけ、2年前の自分にどうしても言いたいことがあるんですよ。準備に時間をかけすぎるな、です。

辞める前、私は退職シミュレーションを9通り作りました。配当3パターン、フリーランス収入3パターン、掛け合わせて9通り。暴落シナリオも入れて、30年分のキャッシュフローを全部計算して、「最低でも10年は持つ」と確認してから辞めたんですよ。完璧だと思っていた。

で、実際にFIREを始めたら、シミュレーション通りにいったことは、ひとつもなかった。フリーランス収入は最低シナリオすら下回りました。最初の半年は月3万〜5万です。一方で配当は増配が重なって想定を上回った。右と左が逆に振れたんですよね。結局、トータルでは何とかなっているけど、あの9通りの意味は何だったのかと。

もっと情けない話があるんですよ。iDeCoの掛金変更。退職したら区分が変わるのは知っていたのに、「書類が面倒だから今度やろう」で2年放置しました。数十万円の節税機会を、そのまま溝に捨てたんです。シミュレーション9通り作る時間があったのに、書類1枚出せなかった。

2年を振り返って気づいたパターンがあります。うまくいったことの共通点は、小さく始めて、失敗して、修正したもの。失敗したことの共通点は、「完璧に整理してからやろう」と後回しにしたもの。全部そうなんですよ。9通りのシミュレーションを作る暇があったら、iDeCoの書類を1枚出せば数万円浮いていた。準備ばかり磨いても、動かなければゼロです。

もうひとつ。体だけは、先に作っとけ

2つ目の伝言はこれです。体だけは、辞める前に作っておいてほしい。会社員時代は通勤が勝手に運動してくれていて、辞めた瞬間にその運動がゼロになる、というのを私は想像できていなかったんですよ。

FIRE後は、健康診断も勝手には来ません。会社が呼んでくれていた健診が、自分で予約する健診に変わるんです。面倒で先延ばしになるんですよね、これが。ジムも散歩も、自分で習慣化しないと誰も代わりにやってくれないんだから。

体だけじゃなくて、生活リズムの設計も同じです。会社員時代は始業時間があるから朝起きる。締切があるから仕事をする。評価があるから頑張る。全部、外からの強制力で動いていたんですよ。FIREするとその強制力が消えるから、全部自分で律する必要がある。私は半年で昼夜逆転しかけました。週2日のフリーランスがあったからまだマシだったけど、完全FIREだったらもっと崩れていたと思う。ここに至るまで1年以上かかりました。お金の設計と同じくらい、体と生活リズムの設計をしておけばよかったと、ここは本気で後悔しています。

サイドFIREのゴールは、辞めることじゃない。選べることだ

後悔を2つ書きましたけど、2年経った今の私に「会社員に戻りますか?」と聞かれたら、答えは即答で「戻りません」です。後悔した2つは、どっちも対策で消えました。孤独はフリーランスで、運動不足はジムと散歩で。消せる後悔だったんですよ。一方、後悔しなかった3つ、時間の自由・ストレスの質・妻との時間、これは会社員に戻ったら全部失うものです。こっちは消せない種類のものなんですよね。

社会保険のことも含めて、辞める前に準備すべき実務は別にあります。国民健康保険が高すぎる理由と最新制度あたりは、退職前の私が読んでおきたかった記事ですね。

FIRE前にやっておけば後悔しないこと(私の実体験から)

  • 社外の居場所を作る — 趣味のコミュニティ、副業仲間、何でもいい。会社を辞めた後に一から作るのは想像の3倍しんどい
  • 運動習慣を先に作る — 通勤がなくなると1日2,000歩まで落ちる。辞めてからジムを始めるより、辞める前に習慣化しておく方が圧倒的に楽
  • 社会保険を自分で計算する任意継続・国保・扶養の比較退職前の節税は辞める前に必ずシミュレーションする
  • 生活防衛資金を1年分確保 — 相場が荒れた時に狼狽売りしないための現金クッション
  • 「あと1年」と言っていないか自問する — 数字が揃っているなら、その1年で増える資産と失う時間を紙に書いて比べる

私が実際に歩いた道のりは5フェーズ完全ロードマップにまとめてあります。

サイドFIREのゴールは、「会社を辞めること」じゃない。「何をやめて、何を残すかを、自分で選べること」だ。2年経って、やっと、こう書けるようになりました。

FIREの後悔についてよくある質問

Q. FIREして後悔する人はどのくらいいる?

私が知る限り、FIRE経験者で「会社員に完全に戻りたい」と言っている人はほとんどいません。ただし、「もっとこうしておけばよかった」という後悔はほぼ全員が持っています。私自身も3つの後悔を書きましたが、どれも「やらなければよかった」ではなく「準備が足りなかった」という種類の後悔です。

Q. 資産いくらあればFIREして後悔しない?

金額だけでは決まりません。私は3,000万円でFIREしましたが、生活費が月15万円だったから成り立ちました。配当利回り4%で月15万円なら4,500万円が目安ですが、生活費が月30万円なら9,000万円必要です。金額より「自分の生活費に対して、配当がいくらカバーできるか」で判断すべきです。FIREに必要な資産の計算方法も参考にしてください。

Q. FIREして暇にならない?

最初の半年は正直、暇でした。というか「自由すぎて何をすればいいかわからない」という感覚に近い。でも2年目の今は、やりたいことが時間に収まりきらない日の方が多いです。ポイントは、FIRE前から「会社以外の居場所」を作っておくことだと実感しています。セミリタイアして暇にならない理由も書いています。

もしあなたが今、2年前の私と同じ会議室で「あと1年」とつぶやいているなら、その1年で増える資産と、失う時間を、紙の右と左に書いて並べてみてほしいんです。並べたら、たぶん答えが出ますよ。私は並べなかったから2年失くした側の人間なので、これは本気でお願いしているんです。今日読んでくれて、ありがとうございました。

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